月刊 追い焚き作業

見て聴いて読んで遊んだ記録です

2022年11月の話と12月の購入予定

急に寒くなってまいりました。

 

そんな12月の購入予定。

でも今月は特に無しかな。

プレイ動画を見てもプレイヤーにイマイチ何をさせたいのかよくわからない『ドラゴンクエスト トレジャーズ』と、PSP版をさんざんやった『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII-リユニオン』はまたいつか機会があれば。

 

それより先月からプレイしているペルソナ5 ロイヤル』がなかなか終わりませんで。

無印の方はプレイしていたので長いゲームだとはわかっていたが、まぁそれにしてもエグいボリューム。30時間プレイしてもまだピラミッド(フタバ・パレス)をクリアした所なんで、半分も行ってないですね。

なんとか今年中にクリアしたい所。

 

あと今日配信された、アーケードアーカイブス テトリス ザ・グランドマスターね。買いましたよ。最高。

テトリスで遊ぶのが久々すぎる上に、20Gの操作感を思い出す所からのスタートなので、クリアまでの道のりが遠い。

当時アーケードでプレイしていた頃は、結構な確率でカンストまで行けたんですけどね。まぁそれも何年前の話だよっていう。

 

 

ここからは先月プレイしたゲームの話。

PS5『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク

いやー面白かったねー。

 

ゲーム的な進化としては、前作よりもゲーム本編と寄り道を上手く分離させて誘導がスムーズなっている。

前作はサブクエストとメインクエストが同時に発生し、プレイヤーにある程度選ばせるという自由度を持たせていたが、今回はよりリニアな方向に。

ゲームが進む毎に訪れる世界それぞれの初訪問時には必ずメインクエストのみ。メインをクリアした後に、そのマップが自由に探索できるという流れにより、ストーリーのテンションを落とさず、またプレイヤーが注意散漫になることなく上手い調整になっていた。

 

物語の方では、今回のテーマは子供の自立と、親の第二の人生の物語。

今回はクレイトスだけでなく息子のアトレウスパートまで用意されており、子供が自立する上で別の世界を体験し成長していく様が丁寧に描かれている。

私達も子供から大人へと至る中で、家族以外のコミュニティに参加し、そこでさまざまな形で他者の目を意識し、それによって自分という存在を演じ分ける事を学ぶ(これは所謂ペルソナや、平野啓一郎の著書『私とは何か』の中で、人間にコアとなる"私"はなくそれぞれの場面で演じ分けている「分人」によって構成されているというのが非常に上手い表現)。

そういった他者の視点による多面性をわかりやすい形として、クレイトスや前作で知り合った人物は少年をアトレウスと呼び、今回出会う他者はロキと呼ばせ、息子の言葉遣いや態度さえも変えて明確に表現しているのは上手い。

 

そして、構成の上手さに唸ったのがフェンリルの扱い。

そもそも元の北欧神話でのフェンリルは、ロキとアングルボザ(本作では途中で登場する女の子)との間に産まれた狼であるが、それをベースとして無理なくゲームに絡める形でフェンリルが描かれている。

 

本作の序盤でロキが大切に飼っていた狼フェンリルが亡くなる(この時点でフェンリルはただの狼の名前であって、いわゆる神性のような物は薄い)。

その後、旅の中で出会った少女アングルボザがロキに魂の扱い方を教える。ただロキはその力を既に体の中に宿していたにも関わらず、彼女と出会うまでは気が付かなかったという部分が示唆的になっている。

ロキが異性との出会いによって魂の扱い方、内部にあるその力を知ったからこそ復活させることが出来たフェンリル

北欧神話の物語をベースにした上で、メタファーを見事に物語の中に溶け込ませてあり、これは上手いと唸ってしまった。

 

そして、物語でもう一人重要なのが親であるクレイトスの子離れ。

ギリシャでの戦い、そして前作での旅を経て、戦いの神である事に疲れていた彼が獲得する新たな予言。それがラストの1シーンで描かれる。

このシーンは本作でも登場する北欧神話の忘れられた軍神テュールとの対比となっており、結局神という存在は人間などからの信仰の深さによってアイデンティティを得ている。

シングルファザーとして精神の支柱を失いつつある中年男性が第二の人生の目標を得る瞬間。まさかクレイトスさんまでミッドライフクライシスの話に至るとは。

これまでのシリーズで延々と描かれてきた喪失と怒りの物語が、ここに来て新たなステージへと昇華した瞬間。

もう胸いっぱいですよ。涙ぐんでしまった。

 

いやーそれにしても素晴らしいゲームでした。

今年プレイしたなかでもトップだし、私がこれまで30年以上ゲームを遊んできた中でもオールタイムベストとして上位に入るゲームです。最高のゲームをありがとうございました。

 

 

それでは、その他のお家エンタメ。まずは本。

ダグラス・マレー(著)『大衆の狂気』

本書の帯に「行き過ぎた多様性尊重は社会をどう破壊したのか」とあるように、近年一部極端な人たちの主張によって加速した新たなイデオロギーによって、どれだけ多くの混乱と分断を生み出したのかを問う一冊。

 

本書では大きく「ゲイ」「女性」「人種」「トランスジェンダー」の4つの事柄について、これらのいわばマイノリティの主張が近年どれだけ歪んできたかが書かれている。

これらのテーマの中で著者が共通のテーマとしているのが、ハードウェアとソフトウェアの問題。

ここでのハードウェアは生まれつきのもの、もしくは生物学的に確認されている事実を指し、ソフトウェアは社会的なシステムや偏見などを指している。

 

例えば冒頭のゲイの項目では、近年多くの当事者が語ることによって広く周知された事として、同性愛は生まれつきのものであって、人間の性的指向性自認はグラデーションであるという価値観。

こういった主張により、同性愛や性自認への理解が進んだことは良かった。

ただ、その過程において社会的な価値観や触れる人物、家庭環境などにおいて後天的に変化していく性的指向の可能性がないがしろにされていく。

同性愛や性自認は生まれつきのハードウェアの仕様であるから絶対に差別をしてはいけないという価値観を盾にしすぎてしまった結果、後天的な可能性が排除された。

 

その結果、同性愛関連の事柄で今一番差別をされているのは、同性愛から異性愛者へと変化したいと思う当事者や、彼らを見るカウンセラーや精神科医になってしまった。

同性愛は個性なのだから転向させるなんてとんでもない。ゲイやレズビアンは矯正しなければいけないような病や障害なのか。そういった言説により攻撃される。

 

しかし、私達は生まれながらのハードウェアの問題でさえ専門家や医師に相談をしたり、また外部的な手段によりそのハードウェアの問題を解決する事は多くある。

性格というものは幼児期から大人に至るまで常に変化していくが、そもそも遺伝子によってセロトニンなど神経伝達物質の分泌量が決まっているので、ある程度の傾向は人によって生まれつき違う。

それでも自分の性格を直したいと願う人がカウンセラーに相談し、場合によって専門医から処方された薬を飲むことは人から叩かれることだろうか。

また、自分の容姿にコンプレックスがある人が、整形をすることは悪なのか。

 

もちろんこれらは、現代社会・資本主義社会において有利とされる性格があるという事実があるので、これを是正する為には各人の性格特性による影響が少ない社会へと変化させる必要はある。

行き過ぎたルッキズムはもちろん悪であろうが、整形を否定する人は現代において多くはないし、そもそも自分の体をどう変化させるかの自由は個人にある。

 

要は人間社会における全ての問題はハードウェアとソフトウェアの両方が関係しているわけで、要素をどちらかの一つを原因とする主張によって歪みが生じてしまっている。

 

一部のフェミニストは、男女に大きな違いはなく社会的によって生み出された偏見と差別によって女性が低い地位にあると主張する。要はソフトウェアの問題だと。

その結果、元男性のトランスジェンダー女性が女子競技の表彰台に登り、元男性が女性格闘家をフルボッコにしている。

スポーツが男子と女子にわけられていたのは社会的な抑圧や差別のせいだったのだろうか。

 

人種差別もソフトウェアの問題と主張された事による弊害。

舞台や映画などで、人種に偏りの無い配役をするべきだという主張。

ただ逆に、描かれた人物設定に人種や国が設定されているのであれば、そのルーツを持つべき役者が演じるべきという主張は上記と矛盾しないだろうか。

そもそもハイカルチャーサブカルチャーから食文化など全ての文化というもののは、さまざまな社会の壁を壊す役割を大きく果たすものであったのに、文化の盗用という言葉によって新たな壁を作る意味とは。

 

ハードウェア、ソフトウェア両面での差別撤廃が重要だったはずなのに、極端な主張によりそれぞれの問題を単純化したことによって生まれる混乱。

人は生まれ持った特徴だけでなく、社会で育まれる中で獲得する個性と同じように、複雑な性や性向があり、人種や生物もそれぞれ違うと主張していたのはマイノリティの人々であったのに、主張を単純化し、それを理解できないわからず屋を叩きのめす武器として使用した途端、主張が歪み、社会システムも歪みつつある。

その怒りは過去の人物にまで向かい、キャンセルカルチャーと呼ばれる歴史の見直しまで行われている。さまざまな立場の人間がその当時の価値観で戦ってきたからこそ現在があるのに、現在の価値観で過去が断罪される。

 

現在正解とされている振る舞いは誰が決めているのか。いつの間にか正解の振る舞いがある一部のコミュニティの中で決定され、急にその価値観に従えと言われるが、そのルールとタイミングはいつ誰が決めたのか。

そもそも人同士の振る舞いに正解などあるのだろうか。

全ての言動がデジタルタトゥーとして残る世界において、今正解とされる振る舞いをしていたとしても、数年後の世界によって断罪される可能性の怖さ。

 

最近では米フロリダ州知事ロン・デサンティスが政策として出した「STOP W.O.K.E. ACT」(W.O.K.Eは白人男性への逆差別を違法とする政策の頭文字を取った言葉だが、そもそもWokeが目覚めた人を現し、StayWoke(目を逸らすな)のスローガンに発展。この政策ではWokeをポリコレに毒された人間を揶揄している)に見られるように、行き過ぎた主張が反感を買い、バックラッシュを呼ぶ結果になってしまっている。

(もちろんアファーマティブアクションとして振り子を作りつつ是正するという手段はあるにはあるが)

 

もちろんこれらの影響は、SNSの登場によって加速した現象の一つ。

どこまで問題を単純化できるかという部分がバズる要素となり、物事を単純化した上で扇情的で短く強いワードを出せる能力が頭の良さとされてしまった。本当は真逆なのにね。

 

その単純化によって一番忘れられているのは、コミュニケーションの主導権は受け手にあるということ。
それが近年、「私がどう感じたのか」という部分が強調されるようになり、その主張による歪みが大きくなってきている。
もちろん、「なんでもかんでも被害者面するな」と言われたり、明確な悪意があるにも関わらず「誤解を与えた」などという声とは戦わなければいけない。
「綿で怪我をする」といったのは太宰治だが、それぐらいに人間の心は繊細で複雑に出来ている。
こういった人々が自分がどう感じたのかを言葉にし、それを社会に対して声をあげたことによって多くの偏見が可視化されたのは大きな進展でもある。

 

それでも受け手の曲解や誤解、レジリエンスを考慮せず、相手の言動をノーガードで受け、すぐに身構え攻撃をするのは無しじゃねっていうことですよ。

多様性重視や社会的公正に向かうべきというゴールは誰もが向かうべき一つの目標であったのに、なぜここまで細かな分断が生まれているのかを整理してみるには面白い一冊。

 

ただ本書で1点気になるのが、何度か著者が本書がテーマにしている事柄について、すでにマイノリティは平等を勝ち取ったのに更に主張しているというような書き方をしている点。(ちなみに著者もゲイの当事者ではある)

男女格差や性的マイノリティーの差別はまだまだ根強く残っており、その根本の事実誤認があるので土台がブレてしまっている。

それでも特にリベラルを自認する人は一読してみると良いかと思います。

 

まぁ議論の中で、一部の過激な主張をするアレな人が混ざると導き出される結論が劣化するという現象は、元も子もない本を書いてベストセラーを連発している橘玲の新刊『バカと無知』にも詳しいのでそちらもぜひ(本屋行くとメッチャ平積みになってますよ)。

ただ、橘玲の著書を喜々として紹介することもまたバカであるというトラップがあるので、ぜひそこに引っかからないように用法用量を守ってご使用ください。

 

 

あと一冊。こちらはミステリー。

荒木あかね(著)『此の世の果ての殺人』

二ヶ月後に小惑星が九州の熊本に落下し、周辺が焦土と化すだけでなく、舞い上がる塵によって気候変動が起き地球全体が滅亡する事が確実になった世界。

主人公である23歳の福岡在住の女性は、その世界の中で自動車学校に通う。

ゴーストタウンとなった町の中、同じく変わり者である教習所の教官と共に毎日技能実習をしていたある朝、二人は教習車のトランクの中に女性の他殺体を発見する。

 

近年大量に(本当に大量に)出版されている特殊設定ミステリの一つで、本作は終末世界とのマッシュアップ

本作で特徴的なのが、終わる世界の中でのサバイバル部分をコアとせず、主人公はある程度の食料と住む場所(安全)は確保された上で、確実に死ぬ場所に住む続けているという諦観を持って過ごしている。

そんな主人公が日常を崩さずに教官と二人で殺人の捜査をするという変な空気感が面白い。

 

もちろんミステリー作品なので、誰がどうやって殺したのかという部分が大きな謎ではあるのだが、それに加えてもう一つ謎なのが、そもそも主人公の女性はなぜ教習所に通っていたのか。

世界が終わるとの発表があった日から、街では一通りの凶悪犯罪が横行し、隕石の落下地点から少しでも離れようと避難する人々はその街を去り、また絶望する人達の間では山で自殺し自然に還ろうとするムーブが流行する世界。

もう無免許運転を取り締まる人すら居ない世界で彼女は免許を取って何処へ向かうのか。なぜそこへ向かわねばならないのか。

本書は終盤でその謎に向かって見事にフォーカスが移っていき、それがとても良い読後感と共に強い寂寥感を生み出している。

 

まぁただ一つ欠点として、ミステリとしては、そもそも犯人も含めたオチが簡単すぎるという問題はある。

それは読者に対してフェアであろうとし過ぎた結果なのか、小説の流れとして違和感のあるセリフや描写がそのまま伏線やトリックに繋がる作りになってしまっている。「マジメか!」とツッコミんで終わる程度のもので、本書の面白さを損なうほどのものではないが。

 

しかし著者はこれがデビュー作で、今年の江戸川乱歩賞を23歳という最年少で受賞と。

サバイバル下での人間や社会の多面性から滲み出る苦味だけでなく、複雑な滋味すら感じさせるラストへの持って行き方やバランス感覚の鋭さは、今後ミステリだけではなく他ジャンルでも活躍していく作家になりそうな気がします。

凄い新人さんが出て来ましたね。次回作が楽しみ。

 

 

ここからは映像関連

Netflix『このエリアのクレイジーX』

怒りが抑えられない男性と、被害妄想に悩まされる女性。

二人は同じ精神科に通い、同じマンションの隣同士に住む住人。

トラブルメーカーの二人が出会って、二人でトラブルを起こしつつ、また周囲を巻き込みつつ、それぞれの過去に向き合って新たな人生を切り開いていくラブコメ

 

韓国ドラマって序盤は意図的にアクの強いキャラを出して視聴者の興味をそそるという構成が多く、回が進む毎にそのエグみが取れていき、結局最後は登場人物全員好きなるみたいなパターンが多い。(最もその落差を感じたのが『椿の花咲く頃』。傑作です)

で、本作も序盤はギャーギャー騒がしいドラマで、結構強めなキャラで来たなと思いつつ見てたら、最終回までその印象で終わって笑った。

ずーっと「なんじゃコイツら」と思いながらも、何故か愛着が湧いて見続けてしまうという不思議な作品。

この変なテイストのまま最後まで完走する脚本の地肩の強さは凄い。

 

 

Netflix『ONI ~ 神々山のおなり』

監督は元ピクサー堤大介、脚本は岡田麿里のタッグで作られたCGアニメ作品。

妖怪が住む山の中で育った主人公の少女。

妖怪たちが通う学校で、クラスメイトがそれぞれの能力を開花させていくなか、何も能力が発芽しない主人公。

いくら努力しても何も出来ない空回りな状況の中、その山に鬼と呼ばれる外部からの侵略が始まる。

 

はっきり言って大して面白い作品ではないし、キャラクタも物語も全てを反転させるだけのベタな展開しかないので、物語の味わいとしては薄い。

ただテーマの一つでもある、山に住む彼らが恐れる鬼という存在を、元々日本の民話などの中で"鬼"と呼ばれる者の曖昧さに絡め、それを現代的なテーマに添わせて物語を作ってるのは上手いと関心した。

 

一つ気になったのが、一応この作品はCGアニメなのだが、ストップモーションアニメ的な演出がされている。

フェルトのようなキャラの質感と低いフレームレートによってストップモーションアニメ感を出しているのだが、ディテールのCGっぽさが抜けておらず、結局スペック不足のPCでカクカクの映像を動かしているような印象を持ってしまった。

でもこの辺りはゲームを普段やるかどうかによって見え方がまったく違ってくるかもしれんね。

ピクサーなどのCGアニメ作品でも、フレーム補間が入ったヌルヌルの映像とか映画好きな人は嫌うけれど(ソープオペラ効果)、ゲーマーの場合はfpsが高い方が見慣れているので自然に感じる的な。

この辺り人間の感じ方って複雑で難しいですね。

 

 

最後に音楽。

Aethral - All About The Rush

先月、運転中に最もかけた曲。

ドロップの入り方でもうアゲまくってるのに、1分54秒辺りからの展開でもうダメ。気持ち良すぎる。一般道で両手上げてハンズオフする所ですよ。危ない危ない。

 

 

Ray_Oh - 3:00 AM (S2i8 Remix)

Ray_Ohのアルバム『Clown Crown』からの一曲。

このアルバム自体Ray_Ohお得意のKawaii系を集めたアルバムになっているのですが、S2i8リミックスで急にゴリッゴリのサウンド。最高です。

 

S2i8から一曲。

S2i8 - GO RAVE

ドンクを聴いてると脳の奥をズンズングイグイされて細かい事がどうでも良くなるような感覚になってきます。それがクセになってたまに聴きたくなる。

 

 

you - ChibiHop

 

kamome sano - I/O

Lilium recordsのコンピ『Lilium XX』からの2曲。

年末に向けて散らかった部屋を整理する最中によく聴きました。

どちらもある種のflowを生み出すような曲で、作業中の疲労感の軽減にちょうどよいです。

 

 

こんな感じで今月はおしまい。

次回は毎年年末に更新している2022年のゲームを振り返りの予定です。

それではまた年末。

2022年10月の話と11月の購入予定

今年の秋は里芋やサツマイモを多く頂きます。

土から掘り出したままの状態かつ量が凄いので、仕事終わった後にダッシュで会社の倉庫に行き高圧洗浄機(業務で使わないのに何故あるのか誰もわからない)を借りてババーと洗って、帰宅する社員に配るというイモ配りおじさんと化しています。

 

しかし、まだ生のサツマイモが大量にあるので、会社の給湯室で蒸してたら、あちらこちらから希望者が来てスゲー勢いで無くなって驚いた。

スーパーとかでよく見る焼き芋の機械とか、そんなに売れるのかなぁと思いつつ横を通り過ぎていたが、やっぱ芋好きな人多いのね。

 

ってコレを書いている間に柿を大量にいただいたので、今度は柿配りおじさんになります。

 

 

そんな11月の購入予定。

11月9日

PS5『God of War Ragnarok

クレイトスと息子の旅路第二弾。

前作で大きく進んだ親子の関係が本作ではどういった形に変化していくのか。

そんな息子が成長していく様は単純に嬉しいのだが、過去シリーズでさんざん父殺しをテーマしていた作品なので、いつか息子に殺されるのでは感が出てて変な緊張感があります。サトゥルヌス的な怯え。

 

今月はこの1本かな。

 

では、先月プレイしたゲームの話。

XBOX『The Division 2』

衝動的にlootゲームが遊びたくなって『Grim Dawn』や『Mincraft Dungeons』などをプレイしてみたものの、それなりに面白いがやってて眠くなる(というか一瞬寝てしまう)という問題があり、結局『Division』に戻ってきてしまった。

 

本作がなにより楽しいのが、ストーリーのゲームクリア(本作としてはチュートリアル終了)までの流れの中で、lootゲーとして落ちるアイテムのバランスの良さ。

この手のゲームとしては装備のドロップ率が低い上に、武器や防具の種類も多く、プレイヤーのスタイルによって無駄になる装備を拾う率が高いにも関わらず、ちょこちょこ武器・防具の更新が出来るようなドロップ調整が上手い。

まぁその調整が入り過ぎているので、突出したヤバい武器を拾うという場面がほぼ無いという欠点もあるのですが。

 

あと敵の動きが良い。

カバーシューターなので、ちょこちょこ隠れながら敵を倒していく中で、こちらのカバーの側面や裏をかくような動きを上手くしてくる調整。コレ本当に素晴らしいですよ。

特定のミッションなど限られた場面での調整が上手いならわかるが、オープンワールドというどこがバトルフィールドになるのかわからないマップの中で、プレイヤーを唸らせるような動きを見せてくれる敵AIの嫌らしさが非常に良いです。

 

そして、今回はDLCの『Warlords of New York』も買いまして。

こちらは本編で無味乾燥だったボス戦がそれぞれ凝ったギミックを利用した対決になってて面白いですね。同時に面倒くさいですね。

つーか問題はDLCのラスボスですよ。めっちゃ強いのね。

無限のようにドローンやら追尾マインやらぶん投げて来て超うざい。

しかも中盤からは相手のジャマーによってこちらスキルが全部使えなくなるとか、卑怯過ぎて笑った。

ドラクエのラスボスが、「俺このままだと負けそうだからここからお前ら魔法禁止ねw」って言ってくるようなもんですよ。

基本的に本作はストーリークリアまでは難易度の低いゲームなのに、ラスボス戦だけ異常。ラスボス戦までに死んだ回数の合計より、この一戦のみで死んだ回数の方が多いかもしれん。

 

あと、どこかのタイミングで前作をもう一回チャレンジしたいなとは思ってるんですけど。前作を途中で止めちゃったのが心残りで。1は結構ガチめな難しさがあるんだよね。

まぁ冬のマンハッタンはいつか再訪しようかなと。

 

 

それではその他のお家エンタメ。まずは本。

大森望(編)『ベストSF2022』

今年も出ました、一年の短編・中編SF作品を振り返るベスト盤。

円城塔、酉島伝法などおなじみのメンバーから、先日亡くなられた津原泰水。そして若手の作家など多種多様すぎてこれはSFなのかと考えてしまう作品まで収録されており、ひたすら面白い。

 

そんな収録作の中でも最もエンタメ度の高い作品が

伴名練『百年文通』

ティーン雑誌で読者モデルをする主人公の女の子が仕事で訪れたのは、古い屋敷をベースにしたハウススタジオ。

撮影の合間に何気なく座った椅子。目の前にある古臭い机の引き出しを開けると旧字体で書かれた手紙が入っており、末尾には"大正六年"の日付と共に女性と思われる名前が書かれていた。

内容から想像するにおそらく100年前に書かれた恋文だと思われるが、旧字体を読み慣れないために文字をスマホで調べつつ付箋を貼りながら読んでいたら、思いのほか時間が経ってしまったことに気づき、付箋を貼ったまま引き出しにしまう。

ただ、何か心にひっかかるものがあり、もう一度手紙を見ようと引き出しを開けたらその手紙がなくなっており、新たに入っている一枚の紙片には達筆な文字で「誰ですか?」と書かれていた。

 

100年前の世界と繋がった引き出しを介して文通をするという本作はジャック・フィニイの『愛の手紙』のオマージュ作品であるが、初出が漫画誌百合姫』であるので百合というかシスターフッドの物語になっている。

 

現実世界に不満を感じる現代の少女と、学ぶことに貪欲な大正時代の少女。

そんな二人が引き出しを介して文通をしていく中、なんとはなしに現代の少女が大正時代を調べていく内に発見するのは、100年前に世界中を襲ったスペイン風邪

COVID-19が日本にも蔓延するかもしれないという不安な中にある現代と、スペイン風邪が日本で大流行する直前を生きる少女。

彼女たちはこの災禍を回避出来るのか、という歴史改変SF。

 

何より楽しいのは大正時代の少女のキャラクタ。今でもその時代を生きた女性の伝記などを読むと、現代の人達よりもよほどラディカルな考えを持っていて驚く事があるが、その猪突猛進なキャラクタがひたすら楽しい。

完成度の高い作品です。めっちゃ楽しかった。

 

そんな伴名練によるSFアンソロジー作品がちょっと前に出ていて、こちらもオススメ。

伴名練(編)『新しい世界を生きるための14のSF』

若手作家を中心にしたアンソロジー

斜線堂有紀(『私が大好きな小説家を殺すまで』はお見事)、芦沢央(最近では将棋をテーマにした『神の悪手』が良かった)など説明不要の人気作家のSF作品から、初出が同人誌というようなマイナーな作品まで網羅した一冊。

しかも、それぞれの作品には伴名練によりテーマが銘打たれており、各作品の末尾には古今東西の同様テーマ作品がガイドとして羅列されているという、私のようなSF初心者にはうってつけの保存版。

 

こちらもハズレ無しのアンソロジーの中で特に好きだったのが

天沢時生『ショッピング・エクスプロージョン』

人口増大と資源の枯渇により世界的な危機にある中で、突如登場した激安スーパー"サンチョ・パンサ"。

商品そのものの自己増殖システムを開発し、陳列されている商品が勝手に増えていくという技術で世界を救う企業となったものの、その増殖をコントロールする管理者(admin)である創業者が亡くなったことで、増殖のスピードにストップがかからないことになる。

増え続ける商品はスーパーを飛び出し、街へとなだれ込んで行く。消費できない量の商品が世界を埋め尽くし人の住む場所さえも奪っていく中、バウンティハンターの主人公が一攫千金を目指してスーパーの本社へと乗り込む。

 

ここで登場する激安スーパーは"ドン・キホーテ"をモデルとしており、あのドンキの名物(?)でもある圧縮陳列が自己増殖によって世界を埋め尽くしていくという、こんまりが頭をぶち抜きたくなるであろう状況を想像するだけで面白い。

ただ物語としてはサイバーパンクな世界のストレートな冒険譚となっており、終わり方を含めて爽快な作品。

 

そんな楽しいアンソロジーなのですが、一つ問題というかハードルが高いのが、この本文庫で800ページあるんですよ。

以前も書きましたが、電子書籍で出ている物は基本的には電書で、フィジカルしか出てなければしょうがなくというスタンスで本は購入してまして。

ただ、この手のアンソロジー物などは資料的な意味として形で残しておきたいので紙の本で買ったんだけど、持った瞬間に即後悔するレベル。ぶ厚すぎ。

いや、内容を読んでやっぱ紙で買っておくべき本だったとは思うけど、ページ多すぎですよ。ここまで厚くなるなら上下巻にわけてほしい。

 

 

あともう一冊。どうせなら最後もSFってことで

チャック・ウェンディグ(著)『疫神記』

舞台はアメリカの田舎町。

そこに突如現れたのは、ただただ歩く人々。ゾンビのようにひたすら歩き続け、その数は一人また一人と増えて行く。

コミュニケーションも取れず、排泄や食事、睡眠すら必要とせずひたすら歩く彼らは何処へ向かっているのか。そもそも目的地はあるのか。そこへ到達したらどうなるのか。そもそもこれは疫病なのか。それともテロなのか。

何もわからないが、一つだけ判明しているのは、彼らの歩みを止めてはいけないという事。歩き続ける彼らの進行を無理やり止めようとすると、電子レンジに入れた卵のように爆散してしまう。

ゾンビのように歩く人々とその家族、疫病の研究者や医師などが彼らと一緒に移動しながら、この現象はいったい何なのかと探っていると、また別の地域から新たな感染症の報告が…。

 

いわゆるゾンビアポカリプス物ではあるが、このゾンビ的な歩く人々、本作では夢遊者(スリープウォーカー)と称される人々が基本的には無害であるという点が面白い。

誰かを噛んで仲間を増やすでもなく、吐瀉物を撒き散らすでもなく、ただただ歩くだけ。

この奇病にかかる人も一見するとランダムで、どこから感染しているのかもわからず、対策の取りようがない。

この状態に国民や政府も彼らをどう扱って良いのかわからない。ただただ静観するしかないのだが、私達人間というものは何か出来事が起きたときに必ず原因や因果など勝手なストーリーを作ってしまう。

夢遊者に対し、彼らは巡礼の旅をする人だの、テロリストが作った歩く爆弾だの、悪魔の行進だの様々な憶測が飛び交う。

 

不確実な情報や茫漠たる不安をそのままに出来ない弱さを持つ人々に広がる混乱や陰謀論。そんな中、世界中に襲いかかる新たな感染症

驚異的な感染力と致死率の高さ、有効な薬も発見出来ないままに蔓延していく様に、夢遊者によって不安が広がり心の土台が揺らいでいた世界中の人々が、今度は本当に人類の終わりを意識した途端、人間社会の秩序は崩壊する。

 

夢遊者本人、夢遊者に寄り添う者、彼らの治療法を探る研究者とサポートを行う高度なAI、徒に情報を発信して人心を惑わす者、来る日の為に武器や装備を整える者、夢遊者を天使と崇める者。

なぜ歩き続ける状態の人々が産まれたのか、致死率の高い感染症の正体とは。これらの謎が明かされていくと共に、これまでの登場人物が終盤で絡みあって壮絶なシーンを迎える。

 

そしてラストにわかる本作のタイトルの意味。

原題は『Wanderers』(放浪者・流浪の民)で、これはこれで秀逸なのだが、日本語版でよくこの単語というか造語をあてたなという。

まさに疫病によって産まれた神の記録。

 

こちらも一つ問題なのが、長いという事。上下巻あわせて1400ページの大ボリューム。

もうひたすら長い。長いが読みやすい文体と退屈しない展開なのでリーダビリティは高い。ラストの約200ページは一気に読まされてしまった。

しかしこれは傑作ですよ。素晴らしい作品でした。今年読んだエンタメ小説の中でもトップ5に入る満足度。

本国ではもうすぐ続編が出るらしいので、こちらも日本語版が出るとイイですね。

続編は原題『Wayward』だそうですよ。不穏ですねー。

 

 

次は映像関連。

Amazonプライムモアザンワーズ/More Than Words』

高校の同級生の男女。ひょんなことから親友になった二人が、同じバイト先で働くことになり、そこで出会った年上の青年。

3人はすぐに打ち解け、休日も男二人女一人の3人でつるみ、まさに青春という日々を過ごしていく中、実は同性愛者であった年上の青年が男の子を好きになり、徐々にその関係性が変化していく。

 

原作は同名漫画だそうで。その漫画の続編と共に1つのドラマシリーズとして構成された作品。

 

ドラマとしての描写がひたすら自然というか、どこまで脚本なのかアドリブなのかもわからないぐらいの空気感が作られているのは凄い。

この土台がしっかり作られていたからこそ、中盤で女の子が決断する突飛な選択がリアルに感じられるようになっている。

これは本当にギリギリのリアリティラインを攻めていて、漫画や小説であれば成立するような話でもドラマだと嘘っぽく見えてしまう展開ってありますよね。この女の子の選択をリアルに見せる事が出来た脚本や撮り方はマジで凄いと思います。

 

人はどれだけ親密な関係になったとしても、他者を完全に理解することなんて出来ない。

でも、わかりあえないからこそ相手を少しでも理解しようと思う事は大切で、その為には言葉を使ってのコミュニケーションが大切。それでも自分自身ですら思ってもみない言葉を発してしまったり、同時に見せる表情や仕草など醸し出す空気によって、それは沈黙ですら言葉として私達は受け取ってしまい、そこから齟齬が生まれる。

しかし、結局人との関係の中でその齟齬を修正する為には、その機会を待って話し合うしかない。

 

本作では、その決定的な言葉というものを完全にカットした形で物語が作られており、その前後の関係性の違いから視聴者に想像させる作りなっている。

その部分もやはり役者や脚本によって上手く表現されており、まさにmore than wordsな演出となっているのは凄い。

 

今年見た国内のドラマの中でもトップクラス。演者の方も映像や演出も全てが素晴らしい作品でした。

 

 

Apple TV+『史上最高のカンパイ! 戦地にビールを届けた男』

舞台は1960年代後半のアメリカ。

長引くベトナム戦争により反戦の空気漂う中、ひたすら飲んだくれてばかりの主人公。

親からはボンクラ息子とバカにされ、同級生や飲み仲間はあいつはいいヤツではあるがバカだと下に見られ、妹は反戦運動の真っ最中。

そんな扱いにうんざりした主人公は酔った勢いで、今まさに戦地へ行って戦っている同級生や知り合いにビールを届けて彼らを応援しに行ってやるとフカしてしまい、引っ込みがつかなくなった挙げ句、本当にベトナムまでビールを届けに行く話。

 

監督・脚本は『Mr.ダマー』シリーズや『グリーンブック』で有名なピーター・ファレリー。

『グリーンブック』では旅をしていく中での爽やかな友情を見事に描いていたが、本作も似たような構成で作られており、様々な土地を歩く中で見た実際の光景、そして出会いが人を変えて行く。

ボンクラだけど憎めない主人公のひたむきさはユーモアが溢れており、コメディ作品として単純に面白い。しかし戦地であるが故に目撃する出来事の数々。それらによってまさに主人公と共に観客もその変化に巻き込んでくる構成が上手い。

主役のザック・エフロンもこんな演技が出来る役者だったのかと驚いた。

 

そしてもっと驚いたのが、こんなバカげた話がまさかの実話だという事。

実話ベースの映画にありがちな、映画の終わりに現在の彼らの写真が出てくるのだが、まさに映画と同じキャラクタで微笑むおじい達の写真が涙を誘う作品。

 

 

あと戦争関連でもう一本

Netflix西部戦線異状なし

不朽の名作を今回はドイツが製作。

WW1当時のドイツを舞台に、ノリで兵隊に志願した若者。だが、彼が放り込まれたのはドイツ・フランス間での終わりの見えない塹壕戦。

連日続く戦闘と、ただただ死んでいく仲間たち。その中で徐々に消耗していく主人公。

その最中、1918年11月11日の休戦が決まる。

 

どストレートな戦争映画で、ひたすら見ているこっちの心がすり減るような描写が延々と続く作品。

序盤と終盤でのカメラワークやアングルを同じにすることにより、繰り返される戦闘から煉獄を想起させるような構成になっている事で異様な恐怖感が醸し出されている。これには体の芯から寒気を感じるような瞬間を味わってしまった。

 

ただオリジナルの映画版に比べると、若干塹壕戦などの描写が薄味にも感じる(この辺りは最近だと『1917』が凄すぎたのでその影響も大きい)が、現代においてここまでの作品を作った事は大変意義があるのでは。

でもやっぱこのタイトル凄いよね。ラストにバンと出た瞬間にゾッとする。

 

 

最後に音楽

Sleep Walker - Wind

上にも書いた先月読んだ本『疫神記』に何度も出てくるスリープウォーカー(夢遊者)という単語を見ていたら、アーティストのSleep Walkerを久々に思い出して、あの00年代前後の当時に流行ったクラブジャズをよく聴いてまして。

Sleep Walkerでは、これがおそらく一番有名な曲じゃないかな。

 

Hajime Yoshizawa - Waltz For Jason (Full Nine Yards Reedit) (Two Banks Of Four Remix)

で、そのSleep Walkerのキーボードだった吉澤はじめの一曲。コレ好きなんだよねー。

久々に氏の名前で検索したら、去年放送されたテレ東の『家、ついて行ってイイですか?』に出てたそうで笑ってしまった。テレ東はヒキが凄いな。

 

 

ハレトキドキ - STAY IN MY HEART feat. AZK

80~90年代のJ-POPやユーロビートなどを再構築したハイパーポップアーティストのハレトキドキ。

アルバム『LOST MEMORY』からのこの曲は、AZK(澁谷梓希)とのデュオで現代のWinkって感じですかね。

 

 

Enei - The Hammer

わりとダークなトラックを得意とするEneiとしては珍しくニューロファンク的なフレーバー。

彼の持ち味をそのままに、よりアグレッシヴな味付けによってひたすらアッパーな仕上がりに。

なんか一つ一つの音が脳の中枢に攻撃的になれと語りかけるようなトラックで、運転中にかけると危ない気がするんだよね。まぁかけてるんだけど。

 

ってな感じで今月はおしまい。また来月。