暑かったり寒かったりで、毛布やコートを出したりしまったりする日々です。
そんな5月の購入予定…と言っても今月は無しかな。
5日『Trek to Yomi』と11日『百英雄伝 Rising』はGAME PASSで配信されるそうで。このサービスがなければ買っていたタイトルなので、ホントGAME PASSはお財布にやさしい。
まぁその他、今月は積みゲー崩しがメインかな。
それでは、先月遊んだゲームの話。
Series X『A Memoir Blue』
主人公の女性は水泳選手としてメダルを手に入れるまでに成功したが、心は満たされず憂鬱な日々を過ごしている。
何が心の中で引っかかっているのだろうかと自分の過去を巡っていきながら、自身の満たされなさの原因を探っていくポイントクリック型のアドベンチャーゲーム。
現在の自分や背景は3D、過去の記憶の人物は2Dのアニメーションで描かれるという非常に珍しい演出のゲーム。
ストーリーは雑に説明すると『エヴァンゲリオン』のアスカの精神世界パートがひたすら繰り返されるような物語(テーマ的にも非常に似ている)。
いわば自身のインナーチャイルドを慰める物語で、その想いが赦されるラストシーンの見せ方が上手く結構ウルッと来てしまった。
1時間ちょっとで終わる簡単なゲームなので、割とおすすめ。GAME PASSに入ってるしね。
Series X『The Pedestrian』
私の国語能力では言葉で説明が出来ないパズルゲーム。
プレイヤーは棒人間のアクションパートと、看板のようなパネルを操作・移動させるパートを交互に使い分けつつ、各パネルにある扉やハシゴを繋げて出口へ行くゲーム。
ゲームとしては2Dのゲームなのだが、街中や工事現場、ビルなどの背景にパズルが設置され、それぞれの部分のステージ背景が1カットの映画のようにシームレスに展開されて目に楽しい。この演出も私の国語能力では表現出来ない(悲しい)。
基本的にパズルゲームとしての出来も良いが、特に最終面での仕掛けには「これは仕掛けが上手い」と唸った。ここまでの繰り返しがあるからこそのトリック。上手い。
パズルゲームとしては非常に難易度が低く、最大でも4・5パターンを総当りすればどのステージもクリア出来る作り。この手のゲームを普段やらない私でもノーヒントでクリア出来たので、万人にオススメ出来る作品です。こちらもGAME PASSにあるしね。
SFCの『奇々怪界 謎の黒マント』の続編をうたうだけあって、SFC版当時の操作感を再現していて驚いた。
ただ若干本作の方が移動などの操作にラグがあるような気がする。同じモニタでレトロフリーク上で走らせた『奇々怪界 謎の黒マント』を遊んでみたが、そちらの方がクイックに感じたので、フレーム単位でのラグ(モーションが細かくなった事に由来している気がする)が若干操作していて気持ち悪い感じはある。
前作をプレイ済だと、あっと驚く演出が1面から入っていてニヤリとさせる仕掛けや、相変わらずチマチマと進んで行くパターンゲーな部分もナイスリスペクト。
難易度的にはSFCの前作とさほど変わらないか、新作の方が若干簡単かと思うのだが、2022年現在に遊ぶゲームとしては被弾するとパワーダウンってのがわりと堪えたというか、そこまでペナルティなくてもって思っちゃった。
一応被弾時にパワーアップアイテムを落とすので救済措置はあるが、落ちたアイテムが敵に重なると拾えない(被弾時の無敵時間が短いので)とか、パワーアップアイテムの落ちた先が穴や池などだと落ちて消えるとか、そもそも落ちたアイテムが消える速度が超早いとか若干いじわるだなーと。
まぁそれでも奇々怪界の過去作と比べると大分親切な作りではあるので、遊びやすいゲームではあります。私がヌルくなっただけですね。
それでは他のお家エンタメ。まずは本。
波木銅(著)『万事快調 <オール・グリーンズ>』
この学校に来たいと思って入学する奴は居ないと称されるほど偏差値の低い工業高校に通い、娯楽は郊外型のチェーン店が入ったショッピングセンターか老朽化して寂れたボウリング場。
癖のあったり親として尊敬出来ない家族や、意欲の低い教師など、手本になるような大人の不在。
このままだと一生この北関東から出る事は出来ないという甘やかな絶望に包まれた3人の女子高生。
だからこそ、彼女達がこんな環境から飛び出す為には金が居る。
そんな同じクラスに通う3人の女子高生が、学校の屋上にあるビニールハウスを使い大麻を育てて売るという、バッドな事をブレイキングするお話。
各々の形に鬱屈している女子高生3人は、それぞれ音楽・映画・絵画・小説・漫画など様々なカルチャーに人生を支えられており、本書の中で過剰なほどに比喩表現として古今東西様々な作品が出てくる。
その例えがどれも芯を食ったチョイスで、キレッキレの表現になっていてメチャクチャ面白い。
ただこれは、小説としてはかなり難しいラインを攻めている部分で、中途半端に使うとただ単に衒学的で読者を置いてけぼりのように感じさせたり、詳細に場面を描写せず比喩で逃げているようにも取られる危険性がある。
しかし本書が面白いのは、その比喩表現を彼女たちに発言(または独り言)させた上で、あまりにも過剰に登場させることで、いわば彼女達の若さ故の何者でも無さを知識で固めているように見せているところが面白い。
武器であり甲冑でもある知識の頻発、他社を見下し会話の相手とのコンテクストが共有されているかどうかを無視して喋る事で、対話による自己変容を避けるような姿勢が彼女達の幼さの表現にも見える。
本作のタイトルはゴダールの作品から取られていると思うが(ただ私の世代的にはピチカート・ファイヴの同名曲がまず思い浮かぶ)、ゴダールの作品と同じく簡単なあらすじだけでは捉えられないようなストーリーに視点はあちこちへと飛躍し、それらのシーン毎のディテールで楽しめせていくのかと思いきや、いきなりアクロバティックに反転してマリファナの煙のように形無く漂っていく無秩序さ。
著者はこれがデビュー作だけあって勢いのみで突っ走っている感があるものの、この小説が持つ強烈なパワーと底抜けの面白さは本物。
今後もの凄い作家になるかも。いや、なるでしょう。
チョン・ヘヨン(著)『誘拐の日』
韓国作家のミステリー。
主人公のおっさんは、白血病で入院中の幼い娘の手術費用のため、豪邸に住む少女を誘拐して身代金ゲットを目論む。
決行当日。ターゲットの家の周りを車で周りながら、あらためて監視カメラの位置などをチェックしつつ運転をしていたら、突然出てきた子供をはねてしまう。
だが、そのはねた子供こそが誘拐しようとしていたターゲットであった。
どんくさいスタートから始める本作は、このまま誘拐が成功するのかどうかという部分を主軸にするかと思いきや、ある出来事から一転してフーダニットなミステリーへと変化する。
設定部分がちょっと雑というかファンタジーが入っていたりと、本格的なミステリーを好む人にはちょっと向かないが、単純なエンタメ小説としての面白さは抜群。
ただ、やりすぎだろってほどに数ページごとに展開が目まぐるしく変化していく面白さに、私はちょっと詰め込みすぎだろうと思ってしまった。
最近の作品でいうと道尾秀介(著)『雷神』とかもそうだったな。(ほぼ1年前の事を最近と言う老い仕草)
『雷神』があらかじめ設計された完成形に向かって面白さをひたすら積み上げていく方向であるならば、本作はひたすらフリまくって後で利用出来るか考えながら走るというタイプであるが。
あと本作は韓国でドラマ化されるとの事なので、1話1話にヒキがある面白い作品になるかもしれんね。
佐久間宣行(著)『佐久間宣行のずるい仕事術――僕はこうして会社で消耗せずにやりたいことをやってきた』
佐久間さん初のビジネス書という事で、軽く読んで見るかと手にしたら、内容が濃すぎて笑ってしまった。
表紙に『誰とも戦わずに抜きん出る62の方法』とあるように、人と過度な競争や対立をせず、かといって迎合する訳でもない。それでも社内での立ち位置を明確にしていく仕事のやり方。
会社内の人間関係・チームの一員として、またマネジメント術からメンタルの保ち方まで会社員としての基礎というか、会社という組織の中で人と働いていくという事の極意が詰まっている。
ウチの若い社員に買って渡したいぐらいに、ここに書かれた事を実践していけば社内評価上がって、それこそ生涯賃金変わってくるぞとマジで思う(ウザがられるからやらんけど)。
本書の至る所でそうそうと首肯しっぱなしなのだが、特に『メンツ地雷を踏んではいけない』の項目で、『人はメンツで動いている』ってのは社会人になるまで気づかなかったんですよね。お恥ずかしい話。
私自身が特に自分のメンツを気にしていなかったこともあって、私の物言いに対して学生時代から上級生やら教師やらに反感を買ったりしてまして。
そのまま会社に入って、新しい事を始める際は過去のやり方がある程度否定されるのは当然だろと思って動いてたら、なかなか調整が上手くいかず、結局その姿勢を見た当時の上司にガッツリとした注意を受けまして。
まぁそれも今になって思えば、ちゃんと上司がペーペーである私のメンツを守る為にサシでの食事の席を用意してくれて、そこで「会社というものは…意見を通す為には…」と順序立てて説明して頂いたので、本当にありがたい経験の一つで感謝しか無いのですけど。
まぁそんな素晴らしい心構えがいっぱい詰まった本ですよ。
会社員経験の薄い著者や坊主などの宗教家、カスコンサル、インフルエンサーなど読者の願望を先回りして書いてくれたり、逆にただ煽るだけという、さながら真空のような中身の無いしょうもない本を読むより、書いてある事地味すぎではって感すらある本書の方が実践的で良いと思います。
つーか、この内容だったら4・5冊ぐらいに分けて、ほぼ同じ内容を数年単位でローテーションすればもっと儲かるんじゃね?ってぐらいの内容ですよ。ほとんどのビジネス書は最初の数ページと目次さえ読んでおけば内容を把握出来るという内容の薄い本ばっかなんだから。
でも、この誠実さよな。佐久間さんが人を惹き付ける部分は。
そして映像関連。
AppleTV+『Pachinko パチンコ』
先日4月末にやっと最終回が配信されまして。いやー素晴らしい。もともとミン・ジン・リーの原作が紛うことない傑作であったのだが、それ上手くアレンジしてドラマとして成功させてます。
生まれた国、時代、人種、周りの人。強制的に打ち出され様々な物とぶつかりあい転げ落ちていくパチンコ玉のように翻弄される人生。
日本統治時代の朝鮮と、バブルに湧く1989年の日本。それぞれの時代の登場人物のストーリーが同時進行し、それらの場面が繋がり重なる美しさ。
回を重ねるごとに各キャラが重層的な側面を見せ、それが過去から現在へ、また過去へと循環していく。
ただ少し残念だったのは、ドラマ版は日本に住む難しさを強調するあまり、若干日本人を悪者的な扱いにしすぎかも。
原作の方で主人公は、日本に来た事に対する後悔と悲しみと同時に、韓国に居続けたら決して出来ないような良い生活が出来ているというアンビバレントな感情がある。
ドラマのシーズン1では、そこの部分を描くまでストーリーが進んでいないということもあるかもしれないが、ドラマとしての見やすさ分かりやすさを重視した結果、原作の持つあえてフラットな視点(しかもかなりセンシティブな調整を著者はしている)にしたことで生まれた複雑さが失われていてちょっと残念。
しかし、主役のキム・ミンハ。素晴らしい演技でしたね。
少女時代の不信や恐れをこめて人を睨みつける表情から、日本で大人として立ち上がっていく時の不可侵な決意を宿した瞳。
運命に翻弄され、何年経とうが決して癒えない悲しみを湛えながらも、したたかに生きた女性の強さを表現したその表情には、畏敬の念すら抱かせるような美しさがある。
彼女が居なければ本作は成立しなかったのではないだろうか。
つーか、ドラマ版で初めて『パチンコ』を知った人は、びっくりするほどパチンコの話出てこないなって思うかも。
オープニングの映像はパチンコ屋なんだけどね。
Pachinko — Opening Title Sequence | Apple TV+
こちらは、シーズン2の更新も決定したそうで。ありがたい。
今のところ今年見たドラマでベスト。しかもダントツですね。
最後に音楽。
icesawder - Stardom
Future BassにSpeed Garageのテイストを強めに入れたサイコーのトラック。
Limonène - sour sweet
サノカモメと月島春果のユニットであるリモネンからの一曲。
これぞ渋谷系って感じの懐かしさ。
macico - Bloom
macicoの新譜。この捉えどころのないポップさがめっちゃ好き。
macico - fork
macicoはもうちょっとガッツリ受けやすいサビを入れればもっと跳ねると思うが、それでもこのサビが弱い所が好きなんだよなぁ。
中村佳穂 - さよならクレール
中村佳穂のニューアルバム『NIA』からの一曲。
いやーやられた。
ドラムンベースを人力で来られるとやられちゃうってのはあるんだけど、そこに乗せる歌声の力よな。
中村佳穂ゴイスー。
Midnight Grand Orchestra - SOS
ゲーマー諸氏には元ナムコでお馴染みの井上拓の新しいプロジェクトMidnight Grand Orchestra。
いやー、これも一発目からやられた。このストリングスとドラム、もう暴力ですよ。快楽の暴力。
今後の展開が楽しみ。