月刊 追い焚き作業

見て聴いて読んで遊んだ記録です

2023年2月の購入予定と1月の話 『ビューティフルからビューティフルへ』『ジャクソンひとり』『カレイドスコープ』

今年は特に寒いねー。

寒いので暖房ガンガン使ってたら、めっちゃ電気代高くて笑ってしまった。明細見て「おぉぅ」って声出たの初めてだよ。

 

そんな2023年2月の購入予定です。

2月24日

Switch『星のカービィWii デラックス』

Wii版のオリジナル作品を未プレイだったのでこの機会に。

 

今月はこの1本かな。

龍が如く 維新 極』はいつかやるリスト行きですかね。

発売日が2月下旬というタイミングが悪く、3月頭には『Wo Long: Fallen Dynasty』があるので下手に手は出せないなという。龍が如くシリーズはどうしてもプレイ時間が長いしね。まぁカービィ優先ですよ。

あとGAME PASSではAtomic Heartが来るそうなので、そちらも機会があれば。

 

今月はこんな感じで。

 

先月プレイしたゲームは、相変わらず『アサシンクリード オリジンズ』を延々とプレイしていたので特になし。

本当にアサシンクリードジャンキーですよ。何回やるんだよっていう。

さすがにちょっと反省しているので、今月はもうちょっと色んなゲームやろう。

 

 

それではここからお家エンタメ。まずは本。

日比野コレコ(著)『ビューティフルからビューティフルへ』

2022年の文藝賞受賞作。

 

高校生のナナ、静、ビルE(MCネーム)の3人の視点で進む日常。

ただ、物語の背骨となるような出来事はなく、ただ淡々と変化している彼らと周囲の状況がそれぞれの視点によって語られていく。

 

本書が何よりも特徴的なのが、独特の文体。

主人公の一人であるナナはいわゆる宗教二世であり、なかなかに辛い人生を送ってきているが、その生い立ちを書く場面で

生まれる、ネグレクトネグレクトネグレクトネグレクトネグレクト、小学校入学、いじめられるいじめられるいじめられるいじめられるいじめられる、中学校入学、いじめるいじめる、高校入学、いじめるいじめる

と表現されており、これにはまいった。

中身のシリアスさとは逆に過剰な反復により生み出される客観性は、ネイティブに他者からの視線が強い時代を生きているからこそ、自分の出来事さえもある種の軽さを持って捉えることで、被害者であり加害者である自身のダメージカットをしている。

 

こういった個々人に生きづらさを抱えながらも自己の多面性を見せるような媒介物をコミュニケーションの表層に出さず、出来るだけお互いを知らず済ませるディスコミュニケーションとしてお互いの土地をまたがないことがマナーとされる現代の人間関係において、本音は常に隠される。

そんな隠された感情の中でも、ライトに使われがちな意味とは逆に心の奥底に隠される言葉の代表格でもある"死にたい"という感情。

 

福祉や道徳が行き届いた現代において、彼らが持つ非常にパーソナルで多種多様な死にたいという感情は"希死念慮"という一言に吸収され、心の底から上澄みまでプカプカと浮き沈みする死にたさのグラデーションが蔑ろにされていく。

本書ではそれを

白に二百もの種類があるように、あなたの『死にたい』って何種類もあるでしょ

と表現してくるから、このフレーズにまたやられてしまう。

もちろんこれは「白って200色あんねん」というアンミカのキラーフレーズを継いだ形であるが、このコラージュの面白さ。

 

死にたいという日々と、朝メイクが上手く行って顔面の出来が良い最高な日という振り幅の中で綱渡りをしつつ生きる彼ら。

多様な関係の中で生まれるある種の宣託のような言葉をありがたがり、その言葉の中からパンチラインパワーワードを生み出し、それをエネルギーへと変えてゆく。

そしてまた、彼らの傷口にも塗られたそれらの言葉は、本編で何度か語られタイトルでもある"ビューティフルからビューティフル"へという矜持へと昇華していく。

 

しかし、中年のおっさんである私には本作で語られた彼らの感情を全て理解出来たとは言えない。

ただそれでも、私の共感を絶対に彼らに悟られないように。それは背負っている物が違うにも関わらず安易な共感によるキモさを強く内包した上から目線の攻撃性を彼らに感じさせないように、密かに頷きたくなる作品。

 

SNSネイティブであるが故の強い言葉の選び方、マスに向けた物ではなく自分自身でメンターとなる人物を選ぶセンス、そこから生まれた言葉で登場人物たちにサイファーさせるような会話の見せ方。

久々に文章を読んで、ただただカッコいいと思える作家に出会った。素晴らしい。

 

 

同じ文藝賞では、安藤ホセ(著)『ジャクソンひとり』もすごく良かったですね。(こちらは芥川賞にもノミネートされてました)

主人公はジムでマッサージをしているブラックミックスでゲイの男性ジャクソン。

彼の家だけでなく複数人へと勝手に届けられた服には、デザインに混ざってQRコードが入っており、そこにアクセスすると個人撮影と思われるゲイによる特殊な性行為のポルノ動画が公開されていた。

その映像は、多くの日本人にとって黒人のゲイ男性の性行為の動画という意味以上の情報を受け取る事が出来なかったため、職場の食堂にてこの動画の男性は君だろうと誤解を受けるジャクソン。

彼は誰が何の為に流出させたかわからない謎の動画の出どころを追う内に、同じくブラックミックスでゲイで背格好も同じという4人の男性と出会い、共に動画の出どころを探る。

 

多くの日本人にとって人種の異なる人々の顔の細かい差異を見分ける事は難しいからこそ、彼らは誤解を受ける。

だが逆にそれを利用し、彼らはそれぞれを交換して生活しながら犯人を追う。

 

登場するキャラクタ4人の書き分けがされているし、それぞれ個性的な彼らなのだが、ページが進むうちに読者すらその4人が誰なのかわからないほど混ざっていくという、読者を煙に巻き、「お前も大多数の日本人と同じだよ」と食ってかかるような構成が面白い。

 

学校でも会社でもなんでも良いが、あるコミュニティやカテゴリの中で実は自分は他者と交換可能であるということを自覚するってのは通過儀礼として誰もがあると思うけれど、それを人種という形で実感するが故の絶望という視点は新しかった。

 

上記のお二人とも本作がデビュー作となるが、今後確実にもっともっとぶっ飛んだ凄い作品を書いてくれるポテンシャルをギュンギュンに感じたので、今後が楽しみですね。

 

 

それではここから映像コンテンツ。

Netflixカレイドスコープ』

巨大なハリケーンのさなかに金庫から債権が盗まれたという実話から着想を得た犯罪ドラマ。

本作が特徴的なのが、全8話を視聴者がどこから見ても良いという仕組み。

要は、どの順番で見るかによって物語の印象が変わるという、人によって色の見え方が変わってくるという万華鏡なコンセプトで作られたドラマ。

 

という作品だが、正直うーん。

そもそも、視聴者が見る順番を選べるってコンセプトがやっぱ難しいですよね。

去年(一昨年だったかな?)に作家の道尾秀介が『N』という本を出していて、それも収録されている短編を読む順番を読者が選べる作りになっていたが、作品としてはあまり上手くいっておらず、道尾秀介でさえやっぱ難しいのかと残念だった記憶があるんですよね。

結局このコンセプトでは、どれを最後に持ってきても良いという作りにならなければいけないが、そうすると一つ一つのエピソードが逆に弱くなると言いますか。

 

キャラクタの深みがなく、誰もが薄っぺらい単調な人物ばかりになってしまっているうえに、無駄なロマンス要素の入れ方が時代遅れ。そもそもプロットにツッコミどころが多すぎるという、酷評しようと思えばいくらでも粗が出てきてしまうので、見る順番どうこう以前の話なのかもしれないが。

ただ試みとしては面白いし、単純な犯罪ドラマとしてはそれほど悪くないと思うので、お暇なら。

 

 

あと映像コンテンツとして、去年の年末から実施されていたRTA in Japan Winter 2022』は、当日のライブだけでなく、先月いっぱいアーカイブを見て楽しませていただきました。

正攻法でのクリアから、バグや仕様を利用した技まで、相変わらずどうやってそれを思いついたのか謎なテクニック満載。

特に『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』の爆弾持って左右にくねくねしながら空を飛んでいって、空中からダンジョンに入ってボス倒すとか、『MOTHER 2』の壁抜けと乱数調整を駆使してゲームをフリーシナリオにしてしまう所とか、『鉄騎』の六角レンチとか、メチャクチャ過ぎて面白かった。

もちろんラストの『スーパードンキーコング』リレーの極まりすぎて意味不明な超絶プレイも最高。

参加者や関係者の皆様お疲れ様でした。今回も素晴らしいイベントでした。

 

 

最後に音楽。

DE DE MOUSE 白金 煌 (CV: 小宮有紗) 電音部 - Sweet Illusion

久々に電音部から。

最近のDE DE MOUSEらしく甘めのポップスとして上手く出来上がってる。

 

DÉ DÉ MOUSE & WaMi 「Daylight & Night」

最近のDE DE MOUSEはこちらも良かったですね。

 

YUKIYANAGI - Fly High

MEGAREXのコンピ『TECHCORE EVANGELIX 03』からの一曲。

アルバム自体が先月のドライブ曲でしたが、その中でも一番アガるのはコレでした。

 

Tristan - Something Like This

 

Tristan - Shadow in the Moonlight

Tristanらしい70~80年代ジャズ・ファンクの雰囲気と、このグルーヴ感。

3月にアルバムが出るらしいので、そちらも超楽しみにしてます。

 

こんな感じで今月はおしまい。

それではまた来月。