月刊 追い焚き作業

見て聴いて読んで遊んだ記録です

2023年4月の購入予定と3月の話 『Wo Long: Fallen Dynasty』『バイオハザード RE:4』『シャギー・ベイン』『頬に哀しみを刻め』『神回だけ見せます! シーズン3』

ヒノキ花粉で眼と鼻がぶっ壊れております。

 

そんな4月の購入予定ですが、今月は特に無しかな。

『コーヒートーク エピソード2』がGAME PASSで配信されるので触っておきたい所。

というかここ最近、ラジオや動画流しながら遊べるようなゲームをプレイしていなかったからか、積みラジオと積み動画が溜まり過ぎてしまったので、しばらくは片手間で遊べるゆるいゲームやら適当な感じで。

 

 

それでは先月プレイしたゲームの話。

Series X『Wo Long: Fallen Dynasty』

『仁王』シリーズのTeam NINJAが手掛ける新たな死にゲーとして登場したが、若干作りが甘かったか。

 

このゲームの戦闘システムのコアとなるのが、化頸と呼ばれるジャスト回避システム。

敵の攻撃をジャストで回避し、そこから攻撃へと転じることで敵のゲージ(SEKIROの体幹や同系作品のスタミナゲージに近い)を大幅に削れるので、それを繰り返して敵の体勢を崩し大ダメージを与えましょうというシステム。

特に敵が繰り出してくる特別な攻撃に対して化頸を決めると一気に有利になるというシステムなので、戦いの主導権は常に相手にあり、ひたすら後の先(ごのせん)を繰り返すゲームという部分は好き嫌いが分かれそう。

 

 

『仁王』シリーズと同じく、武器や防具に固有の特殊効果(OP)がランダムで付与されており、それが装備のレア度やセットアイテムなどと絡むシステムなのだが、これが上手く機能していない。

そもそも本作はマップ内に多数配置されているポイントに旗を立てる事によって、そのマップにおける主人公の強さを底上げするというシステムが採用されている。

これは主人公固有のレベルとは別の数値として"士気・不屈ランク"として存在しており、このランクが1違うだけでもボスの難易度がまったく違ってくる程に、主人公のレベルや装備の強さを凌駕する勢いで重要な数値になってしまっている。

 

要は、どれだけ良い装備をしようが、プレイヤーのレベルを上げようが、結局重要なのはマップをくまなく探索して旗を立てる事。

これによっていわゆる装備のトレハン部分やキャラクタの成長システムが死んでしまっているし、ボスに至るまでの道中は旗を立てるという目的に集約される。

おそらく本作が調整の甘いアンバランスなゲームに見える元凶がそこにある。

グラフィックや敵のデザイン、アクションゲームとしてちゃんと攻撃の手応えと爽快感のあるモーションなどそれぞれ良く出来てる部分も多い。

しかし、まるで交響楽団のコンサートに幼児が紛れ込み、おもちゃのラッパを好き勝手に吹くように、旗の要素が他のパートを台無しにしてしまっている。

 

そんな問題点が大きいゲームではあるがアクションゲームとしてはそこまで悪いものでもなく。このジャンルの死にゲーとしては非常に単純なゲームで、道中はほとんどのマップで仲間を囮に使えるし、ボス戦で覚えるべき攻撃は2・3つと超簡単で初心者向き。

細かいマップ探索が強制されるものの、ソウルライクなシステムを採用した普通のアクションゲームとしてはある程度遊べる出来ではありました。本当に旗のシステムだけがもったいない。

 

 

Series X『バイオハザード RE:4』

見事なリメイク。

オリジナルと同じく、村、古城、孤島と3つのロケーションに渡って繰り広げられる場面を余す所なく再構築。

若干使い捨て感のあった脇役キャラ達にもスポットが当たるよう、新たにストーリーを肉付けしたことによって、それぞれのキャラクタの深掘りもされた。

 

またREシリーズらしく、サバイバルホラーゲームとして緊張感のあるゲームプレイ。

全体的な難易度アップはもちろん、新たな敵配置、構成によってほぼ違う作品として生まれ変わっている。

主人公レオンの機動力はオリジナルよりも若干落ちているが、その代わりに相手の攻撃を直前で受けるパリィを採用することでバランスが調整され、咄嗟の判断に選択肢が増え新たなプレイフィールを生み出している。

 

一つ本当に残念というか、システムのミスマッチが見えたのが照準の仕様。

オリジナルの『バイオ4』は各武器にレーザーポインターが装着されており、赤い点にまっすぐ飛ぶ仕様であった。ただ大きく手ブレはするので、そのポインターの動きがエイムする際のもどかしさとしてゲームバランスに組み込んであった。

 

で、本作は手ブレの要素は残ったままレーザーポインターは廃止され(武器によってオプションで装着出来るものはある)、従来のシューターのようなレティクル(クロスヘア)になっている。

その仕様も過去のREシリーズと同様に、エイムの動作から動かずに止まった状態を続けることでレティクルが収束するという仕様。収束まで待たないと、初弾であってもレティクル内でブレるという集弾率が採用されている。

これがシステムとして上手く行ってない。

 

 

そもそもゲームにおけるレティクルによる開きというのは、いわば手ブレと集弾性を視覚化したものであって、そこに従来の手ブレの要素が残ったままだと、照準が2重にブレているという状態になっている。

オリジナル版にあったプレイフィールとして、ポインターはブレるが確実にそこへ飛ぶのだから、銃への信頼性が高く攻めの状態を作りやすいバランスだった。

本作では上述のようにレオンの機動力が落ちている上に、敵のアグレッシヴさと耐久力(ヘッドショット一発で敵が怯まない場合がある)が上がっているので敵集団への攻めが難しい。

その上に、止まった状態でないとブレる照準によって中距離以降への集弾性に問題が残ってしまうため、結果行き止まりのような不意打ちを食らい辛いポジションで止まって対処する"待ち"の状態がとても強いバランスとなっている。

このレティクルが収束するREシリーズの仕様は、足の遅いゾンビ1・2体を相手していたRE:2, RE:3ではマッチしていたが、本作のように展開が早く集団を相手にする作品ではイマイチだったかと。

 

ただ、不満点はこれくらいですね。

 

オリジナルにあった多様なロケーションを大幅に削ることなく、また敵を狙い撃って倒すというコアな部分を残しながらも、初回プレイの1周15時間程度の間、まったく途切れる事無く緊張感も持たせたこと。

その緊張感も、ホラー演出、多様な地形から生み出された敵配置、弾薬・回復薬のリソース管理などさまざまな面が組み合わさった形で表現されている。

 

オリジナルの『バイオハザード4』がTPSとアクションの融合として強いインパクトを与えたが、逆にヒットしすぎた事によってバイオ5・6の迷走の原因ともなってしまった。

それらから回帰するようにバイオ7・8とナンバリングが作られている中で、同時進行として作られたREシリーズでは、ホラーゲームとしての再構築を目指した。

そして本作では、それらに加えてあくまでシューターとしてTPSに軸足を置きながら、サバイバルアクションアドベンチャーとしての可能性というのを世界に見せつけた作品になったように思います。

絵画の修復のようなリメイクではなく、チャレンジによって高みを目指し、それを達成した作品です。素晴らしい。

 

 

それではその他のお家エンタメ。まずは本。

ダグラス・スチュアート(著)『シャギー・ベイン』

舞台は1980年代のイギリス・スコットランドグラスゴー

サッチャー政権による大胆な金融政策により国内に失業者が溢れ出している、そんな貧しい地域に住むシングルマザー家庭の物語。

 

このタイトル『シャギー・ベイン』というのは主人公の少年の名前。

母と姉と兄、そして末っ子のシャギー少年の4人で暮らしているが、問題なのは母。彼女は自尊心と虚栄心が強く自分をお姫様のように扱いなんでも要求を飲んでくれる夫を求めてしまう女性。

しかも、彼女は幸か不幸か外見が非常に美しいが故に結婚と離婚を繰り返し、その理想と現実の狭間に突き落とされる悲しみから逃れるように酒を飲み続け、その果てにアルコール依存症となる。

国から支給される給付金すらも全て酒に消え、貧乏な暮らしと足りない酒から来る破滅的な衝動は子供達へも向かい、その結果、家からは姉が去り、兄も去り、残されたのはシャギー少年一人となる。

とても心優しく、また母親が大好きであったシャギーは、何とか彼女を支えようとするが…という流れ。

 

要約してしまうと、本作は600ページに渡ってただのアル中の母親と息子の話が延々続く物語で、そこに当時のイギリスの社会背景と貧困・格差・宗教・DV・セクシャリティ、そして問題のある家族を支えるために教育の機会を奪われてしまうヤングケアラーという要素が絡んでいる。

ただ、本作が素晴らしいのが、何よりもこの子供が母を想い続ける気持ちの切なさにある。

 

本作の中盤で描かれる母親がアルコールと決別出来た日々。それはほんの短い期間であったとしても、何もかもが上手くいっていた幸せな日常の記憶。

その日々が戻るように願い続けるシャギー。その思いをひたすら破壊し続ける母親。

シャギーの期待と裏切り、そんな描写が延々と繰り返される中にほんの一瞬だけ見せる母からの愛情。それは日々の不満や怒り、ただのアルコール不足から来る気の迷いなのかもしれないが、それまでの辛苦が全て無くなるかのような胸に広がる暖かさ。

 

まぁ人によっては、DV被害者のように「本当はいい人なんです」と家族を庇い続けるだけの作品にも見えてしまうかもしれないし、愛というのは無限の言い訳を思いつきが湧くまやかしの泉かもしれない。それでも子供が親を思う気持ちや、母親という存在の大きさ。

こんなに愛という感情がストレートに美しく描けている作品を久々に読んだ。

今、こうやって思い出しながら書いているだけでもちょっと涙が出てきてしまう。

 

実は本作は著者の自伝的な小説だそうで、その当時の噛み切れない想いが詰まった作品なのだろうと思う。

かなり悲惨な境遇でありながら、それでも母が居た日々の輝かしい記憶の美しさをちょっと誇らしげにも見える形で綴られており、それが世界中に共感を生んだのかもしれんね。

ちなみに著者は本作がデビュー作でしかもブッカー賞受賞だそうで。ゴイスー。

 

 

S・A・コスビー(著)『頬に哀しみを刻め』

街中で射殺された男性二人。

顔の形が判別出来ないほど執拗に銃弾を撃ち込まれた二人の男性は同性婚のパートナー同士だった。

大胆な犯行であるのに進展しない捜査。それに業を煮やした被害者の父親同士が犯人を追う決意をする。

だが時を同じくして、薬物売買だけでなく殺人すら厭わない地元のバイカー達もが、この事件の真相を追っている事がわかってきて…という物語。

 

復讐の為に父が立ち上がる、またそれもバディ物なので題材としてはありがちというか奇抜な設定でもないが、この独自に捜査をする二人のキャラクタが面白い。

一人はアル中の貧乏白人で、もう一人は造園業を営む黒人男性。

この二人の共通点は、過去にそれぞれがかなりヤバい罪で服役経験のある前科者ということ。

そんな彼らの捜査は聞き込みですらひたすら暴力。何か知っていそうな人間を見つければ、頭を掴んで机に叩きつけ、指を一本ずつ折りながらウソを吐けない状況に追い込む。

殺さざるをえない状況であれば、躊躇なく頭を潰し、バラバラにして自身の造園会社にある木材粉砕機にかけて粉々にしてから堆肥と混ぜる。

過去の経験から復讐の甘い味と暴力の娯楽性が体に染み付いた人間が、息子達の敵討ちのためにひたすら強引に捜査を進めていく面白さ。

 

ただ本作がただの薄っぺらい犯罪小説と一線を画すのが、ジェンダーセクシャリティなど現代に残るさまざまな問題を、物語を深く見せる為の装飾ではなく真正面から捉えていること。

特にこの父親二人が共通して悔やんでいるのが、息子の生前に彼らのセクシャリティを肯定出来なかったということ。

本作で繰り返される暴力の数々は、息子たちへの罪滅ぼしでもあり、その後悔から一歩でもマシな人間になる為の贖罪として人をぶん殴り続ける旅となる。

彼らがこの復讐の旅路の中で体感していくさまざまな場面の中で、亡くなってしまった息子の気持ちに共感し理解する時。その度にある種のIntegrityを獲得し、それが殺人事件の真相と完全にリンクした時、父親二人の怒りは最高潮を迎える。

 

読む手が止まらない作品というのは数多くあるが、その中でも最も強い。それこそ、ここ1年間で読んだ本の中でも最もページターナーであり、文句なしの傑作でした。

この著者は本作で初めて触れたが、読み終わった後すぐに著者の既刊『黒き荒野の果て』を電書で買ってしまった。そちらを読むのも楽しみ。今後の活躍にも期待です。

 

 

ここからは映像関連。

TVer『神回だけ見せます! シーズン3』

TVerのオリジナル番組のシーズン3。

今回も謎の大晦日特番での吊り橋爆破、馬場vsスタン・ハンセン、ガッツ石松が見せたチャンピオンとしての横顔など見どころばかり。

 

驚いたというか嬉しかったのが、シーズン3に初めて見たことのある番組が紹介されていて、それが『音のソノリティ』。

番組と番組の間に入る数分のミニ番組だけど、生活のリズムとしてテレビをつけっぱなしにしている時間と重なるのか、結構な確率で見てるんですよね。

この神回として紹介されているものも記憶に残ってるし、なんなら岐阜県の大イチョウは旅行のついでに現地に行ったことありますよ。さすがに落葉の時期ではなかったので、ただのデカいイチョウの木でしたが。

 

あと良かったのが、『アナザースカイ』の坂上忍

ひたすら酒飲んでるだけの映像の中から出た一言。

「責任取りたくて仕事してんじゃないの!?」って言葉には痺れたというか、夜寝る前にこちらもちょっと飲んでたのもあるだろうけど、モニタの前で「そうだよなっ!」って声出ちゃったよ。

 

 

最後に音楽。

竹内アンナ - WILD & FREE

竹内アンナは毎回新譜やアルバムが出る度にチェックするくらいは好きなアーティスト。

ただかなり前にリリースされた『Free! Free! Free!』以降はちょっとガツンと来る曲が無いなと思っていた所にやっと来た。

トラックへの音としての歌詞の乗せ方の良さだけでなく、やっぱ途中に入るアコギの間奏の気持ち良さよ。叙情的なサウンドと彼女の持つポジティブな歌声という、ある種相反した音の融合。コレですよコレ。

 

竹内アンナ - Free! Free! Free!

 

 

London Elektricity - Cum Dancing

数日前に、この『Cum Dancing』のMozey Remix(Hospital設立からリリース500枚記念企画)が出てて、それに触発されてオリジナルが収録されたLondon Elektricityのアルバム『Billion Dollar Gravy』を聴いてたり。

つーか、このアルバム出たの20年前ですって。うわっ!!あれから20年!!

 

そういや20年で思い出したのが、有野課長でお馴染みの『ゲームセンターCX』も20周年なんですよね。

先日放送されたのはファミコンの『Wits』。初回から全て見ている中で、この20年で初めてまったく知らないゲームが出てきて驚いた。

見たところスネークゲームの元祖『Blockade』の派生(このジャンルは日本だとGB『かこむん蛇』が有名かな?)で、プレイヤーは人間だが一度通った場所は二度と通れない一筆書きのルールになっているのが面白い。いやー良いもの見せてもらった。

 

London Elektricity - Remember The Future

いやーしかし20年て。

Like it was only yesterdayですよ。

 

 

Author wind - Code Frappe

 

DJ Shimamura - House Baby House (Happy Handbag Flava Mix)

最後は暖かく春らしい季節になってきたのでアッパーで華やかな2曲でシメ。

 

こんな感じで今月はおしまい。

また来月。