あけまして。
今年も2022年1月の購入予定から…。
とは言っても買うものが無いんですよね。特に気になるゲームは無し。
それでは12月にプレイしたゲームはといえば。
12月からの年末はずっと『Borderlands 3』をやっていたので特に感想も無し。つーか私がたまにやる、ながらゲーミング強化週間ですね。RTA in Japanだの、YouTubeだの、Netflixだの、ラジオだの、溜まったコンテンツを流しつつ味の薄いゲームを遊ぶという。
だから書くこと何も無しってのも年始から寂しいねってな訳で、せっかくなので2021年読んだり見たりしたゲーム以外のお家エンタメ話をまとめてゴチャっと。
まずは本。
まぁ正直今年も劉慈欣(著)『三体III 死神永生』がベストだし、年末に出た短編集『円』でダメ押しな感じなんだけど、それではあまりにアレなので、今年読んだ中から印象的だった物を。
エンタメからは、ユーディト・W・タシュラー『誕生日パーティー』。
オーストリアに住む中年の男性は、妻と子供と平和に暮らしていた。仕事も家庭も順調に進み、この週末には節目となる50歳の誕生日パーティー。
近所の人やお世話になった人を呼んで盛大に行われるパーティーの前日。子供達がこっそりと用意したサプライズとして呼んだ一人の女性は、長年会ってなかった両親の幼馴染だった。
昔話をして楽しむ夕食を終え彼女がテーブルを去る前、家族の前で放った一言、「あなた本当の誕生日は違うよね。まだ家族に言ってないの?」という暴露。
彼女は父親の何を知っているのか。何故悪意を持って誕生日パーティーへ参加したのか。夫の過去を知りたい妻。話したくない夫。そしてその雰囲気を感じ取る子供たち。
何もかも順調だった家族の関係、そして誕生日パーティーというめでたい席を誰もが壊さないようにする中、その薄氷をヒールでズカズカと踏み荒らそうとする女性。
そんな両親と女性、全ての物語の始まりは、ポル・ポトが支配しクメール・ルージュが市民を虐殺していた1970年代のカンボジアへと遡る。
それぞれの登場人物の過去が年代も国もあちこちへと飛ぶスペクトラムな構成で明らかになっていく単純な面白さがあるが、それに加えて各人の視点による食い違いがテーマになっており、そのズレを感じながら全体像のピースを組み合わせていく構成がメチャクチャ上手い。
カンボジア時代の過去の描写などかなりエグい部分もあるので万人向けではないが、それでも小説として抜群の面白さです。
あと柞刈湯葉(著)『人間たちの話』
元は短編集であるが、年末に出た『ベストSF2021』(これもメチャクチャおすすめ)に表題作が収録されており、その完成度にひっくり返り、即本書を購入した。
少年時代に現在の地球の生命は全て海から派生した生き物に過ぎないという事実を知ってしまった主人公が、絶対的な他者を求めて地球外の生命の研究に身を投じることとなる。
そんな折、姉が産んだ子供を捨てて蒸発。代わりに面倒を見ていた祖父母が日本を離れる事になり、結果主人公が一時的に引き取ることになる。
偶発的な運動により進化が起きた生命と、突然増える家族。孤独を癒やし他者を慈しむ瞬間が生まれる美しさ。
読み終わった後に「うわー良いものを読んだなー」て全身を駆け巡る喜びがあった。そしてこのタイトルが秀逸。まさに『人間たちの話』なのです。
表題作以外も『1984』からの未来を描きつつもポジティブな楽しみを見つける若者らしさに溢れた『たのしい超監視社会』、何星人が来ても満腹にしてやるぜという屋台『宇宙ラーメン重油味』、誕生日に家に帰ったら部屋のど真ん中に岩があった『記念日』など傑作ばかり。それぞれの主人公のイラストがあらゐけいいち氏によって描かれている表紙もかわいい。
その他、もう出る前から傑作である事はわかっていたが、そんな異常とも言える期待を超える傑作を生み出したアンソニー・ホロヴィッツ(著)『ヨルガオ殺人事件』がダントツでベスト。
以前も紹介した佐藤究(著)『テスカトリポカ』、逢坂冬馬(著)『同志少女よ、敵を撃て』も良かったですね。
ノンフィクションでは、ルドガー・ブレグマン(著)『Humankind 希望の歴史』。
私達の社会、いや、そもそも人間ってものは放っておくとシッチャカメッチャカになってしまう。だからこそ道徳が必要であり、ルールが必要であり、法律によって管理が必要なのだ。
いや、しかし人間ってそんなに悪い人達ばかりなのか?もっと根っこの部分は良いのでは?という性善説を突き詰めた一冊。
上巻では、「スタンフォード監獄実験」、「ミルグラムの電気ショック実験」、「アイヒマン裁判」、「イースター島で起きた残酷な内戦の歴史」、「割れ窓理論」などなど。
これらの誰もが知るような有名な出来事は、そのどれもが性悪説を決定づけるような証拠となっているが、「スタンフォードの監獄実験」が現在では実験とは名ばかりのとんでもないインチキであるというのはかなり有名であるように、上記それぞれのデータを詳しく見ていくと、本当に人間の中に悪はあるのかという疑問に行き着くような事実ばかりが出てくる。
しかし、何故我々は人間の本質は邪悪であるというデータに飛びついてしまったのか。
下巻では、それらのデータを見た上で、どれほど人間というのはそもそも善人なのか。悪が生まれるのは心から湧き出すのではなく、システムの歪によって生まれるのではないか。
そこから、まず人に対して疑念を持って接するよりも、まず人を信じてみようぜっていうメッセージに溢れている。
この部分が割と私の中にヒットしまして、仕事などの部分にフィードバックされたりしました。その結果、失敗成功色々あったものの、去年の暮に久々にやった忘年会で、若いのから上の人にまでお世辞だとしてもありがたい言葉を頂いたりして良かったなと。
まぁでも悪ってそもそも純粋な悪ってよりも、間抜けとかアホとかそういった部分の発露ですからね。そう思えば誰もが善人であり悪人でもある訳で。
この本は珍しくフィジカルの本で買っていたのですが、大変感銘を受けつつ本棚にある『ヤミ金ウシジマくん』全巻の隣に並べてあります。おそらくどちらも人間の本質を表している名著だと思います。
あとTBSラジオ好きとしては、澤田大樹(著)『ラジオ報道の現場から 声を上げる、声を届ける』。
著者は2021年の三省堂の新語に入った「更問い」を広め、1年の内に森元首相・菅元首相にそれぞれ怒られる質問を飛ばした人物であり、現TBSラジオ記者。
テレビや新聞の記者はそれぞれの担当分野でわかれているが、人手を割けない斜陽産業であるラジオで働く著者はほぼ全ての取材を一人で行っている。だからこそ、複数の取材先へとフットワーク軽く移動し広い視野で取材が出来ている。
その著者がどういった経緯でTBSラジオへと入社し、ラジオの記者とはそもそもどういった職業なのか、そして著者の矜持を知ることが出来る一冊。
政治家などが映像で見せようとしている画。どういった意図で会見の場がセットされ、何を見せたいのか、また見せたくないのかという部分をあえて映像が見られないラジオだからこそ、言葉だけでその真意に迫り、リスナーへと届けることが出来るというのには膝を打った。
澤田記者が出演しているTBSラジオ『アシタノカレッジ』金曜日のパーソナリティである武田砂鉄(著)『マチズモを削り取れ』も今年良かった一冊ですね。
以前も書いたキャロライン・クリアド=ペレス(著)『存在しない女たち』とテーマを共通としており、誰もが疑問に思わないようになってしまっているルールや空気の異常さをあぶり出し、まず今の世界をちゃんと見ようぜというメッセージ。
その他、こちらも以前書いたパトリック・スヴェンソン(著)『ウナギが故郷に帰るとき』、竹倉史人(著)『土偶を読む』も超良かったです。
そしてアニメ。
2021年は『エヴァ』『ポンポさん』『呪術廻戦 0』と劇場版で満足度の高い作品が多かったが、それらを飛び越えて遥か高みに到達していた作品がコレ。
Netflix『Arcane』
これはもうマスターピース。ここ数年で見たアニメで一番おもしろかった。
『League of Legends』に登場するキャラクタ達のバックグランドを掘る作品。
ストーリー的には世界が全面戦争に突入する前というプロローグ的な位置にありながら、ここまでテンション高い状態が1話から最終話まで維持されている異常さ。
ゲームの映像化という割と難しい課題の中、アニメ作品として最高傑作の一つです。私のように『LoL』を知らない人でも全く問題なく楽しめる作品ですよ。しかしスゲーの作ったな。
次点で、
『オッドタクシー』、『インビンシブル ~無敵のヒーロー』が素晴らしい。
あと『無職転生』もシーズン1から見ているが、これ何処から金が出てるの?ってぐらい映像のクオリティが高く、演出の細やかさにおいてもアニメの歴史の中でもトップクラスの作品。主人公がキモすぎるという一点のみで世間一般を巻き込む大ヒットとはなれないだろうが、一見の価値は十分にある。
この辺りですかね。どれも最高に面白い作品です。
最後にドラマ。
2021年も韓国ドラマが強くて、Netflix『D.P. -脱走兵追跡官-』とNetflix『ムーブ・トゥ・ヘブン: 私は遺品整理士です』の2つかな。
韓国の社会問題に思っきり切り込んだ前者、泣きの物語に全振りした後者。どちらも心を揺さぶる素晴らしい作品でした。
韓国ドラマ以外では、
アマプラ『The Underground Railroad』
コルソン・ホワイトヘッドの小説『地下鉄道』をベースにしたドラマ。
まだ黒人が奴隷とされていた1800年代のアメリカ、その奴隷達が逃げるのをサポートした秘密結社『地下鉄道』。
あまりにも重いストーリーと、あまりにも美しい映像。その組み合わせから染み出すように出てくる悲しみの深さ。
ちなみにゲームの『Fallout』で出てくる勢力"レールロード"はこの『地下鉄道』からインスパイアされているので、彼らの理念を理解する副読本的な感じでゲーマーの方も是非。
そういや2021年に読んだコルソン・ホワイトヘッド(著)『ニッケル・ボーイズ』。そして、『地下鉄道』に超自然的な要素を入れたタナハシ・コーツ(著)『ウォーター・ダンサー』と、関連となる作品に触れた一年でしたね。もちろんどちらも傑作です。
次点で、
Netflix『メイドの手帖』
DV夫から逃げる為、一人娘と逃げてきた母親が主人公。
誰も助けてくれない八方塞がりな状況から一筋の光が見えたと思ったらまた閉ざされるという、親子の周りにある様々な壁がじわじわと迫ってくる辛さがリアル過ぎる程に表現されている。
『The Underground Ralroad』が黒人である事の辛さを描いた作品であるが、本作はシングルマザーとして生きる辛さが溢れすぎている作品。どちらも社会のシステムによって不幸が生まれている。この2作品はイッキ見が出来ない程1話1話が重かった。
𝖱𝖤𝖳𝖱𝖠𝖢𝖤𝖱 𝖮𝖲𝖳 𝖵𝖮𝖫.𝟣
— SAM WAITIN @ HYPERTRANCE (@sam_waitin) December 2, 2021
𝟰 𝗧𝗥𝗔𝗖𝗞𝗦.
𝗢𝗨𝗧 𝗙𝗥𝗜𝗗𝗔𝗬.
𝑀𝑈𝑆𝐼𝐶 𝐵𝑌 𝑆𝐴𝑀 𝑊𝐴𝐼𝑇𝐼𝑁 pic.twitter.com/61QL4OtDPK