今年の秋は里芋やサツマイモを多く頂きます。
土から掘り出したままの状態かつ量が凄いので、仕事終わった後にダッシュで会社の倉庫に行き高圧洗浄機(業務で使わないのに何故あるのか誰もわからない)を借りてババーと洗って、帰宅する社員に配るというイモ配りおじさんと化しています。
しかし、まだ生のサツマイモが大量にあるので、会社の給湯室で蒸してたら、あちらこちらから希望者が来てスゲー勢いで無くなって驚いた。
スーパーとかでよく見る焼き芋の機械とか、そんなに売れるのかなぁと思いつつ横を通り過ぎていたが、やっぱ芋好きな人多いのね。
ってコレを書いている間に柿を大量にいただいたので、今度は柿配りおじさんになります。
そんな11月の購入予定。
11月9日
PS5『God of War Ragnarok』
クレイトスと息子の旅路第二弾。
前作で大きく進んだ親子の関係が本作ではどういった形に変化していくのか。
そんな息子が成長していく様は単純に嬉しいのだが、過去シリーズでさんざん父殺しをテーマしていた作品なので、いつか息子に殺されるのでは感が出てて変な緊張感があります。サトゥルヌス的な怯え。
今月はこの1本かな。
では、先月プレイしたゲームの話。
XBOX『The Division 2』
衝動的にlootゲームが遊びたくなって『Grim Dawn』や『Mincraft Dungeons』などをプレイしてみたものの、それなりに面白いがやってて眠くなる(というか一瞬寝てしまう)という問題があり、結局『Division』に戻ってきてしまった。
本作がなにより楽しいのが、ストーリーのゲームクリア(本作としてはチュートリアル終了)までの流れの中で、lootゲーとして落ちるアイテムのバランスの良さ。
この手のゲームとしては装備のドロップ率が低い上に、武器や防具の種類も多く、プレイヤーのスタイルによって無駄になる装備を拾う率が高いにも関わらず、ちょこちょこ武器・防具の更新が出来るようなドロップ調整が上手い。
まぁその調整が入り過ぎているので、突出したヤバい武器を拾うという場面がほぼ無いという欠点もあるのですが。
あと敵の動きが良い。
カバーシューターなので、ちょこちょこ隠れながら敵を倒していく中で、こちらのカバーの側面や裏をかくような動きを上手くしてくる調整。コレ本当に素晴らしいですよ。
特定のミッションなど限られた場面での調整が上手いならわかるが、オープンワールドというどこがバトルフィールドになるのかわからないマップの中で、プレイヤーを唸らせるような動きを見せてくれる敵AIの嫌らしさが非常に良いです。
そして、今回はDLCの『Warlords of New York』も買いまして。
こちらは本編で無味乾燥だったボス戦がそれぞれ凝ったギミックを利用した対決になってて面白いですね。同時に面倒くさいですね。
つーか問題はDLCのラスボスですよ。めっちゃ強いのね。
無限のようにドローンやら追尾マインやらぶん投げて来て超うざい。
しかも中盤からは相手のジャマーによってこちらスキルが全部使えなくなるとか、卑怯過ぎて笑った。
ドラクエのラスボスが、「俺このままだと負けそうだからここからお前ら魔法禁止ねw」って言ってくるようなもんですよ。
基本的に本作はストーリークリアまでは難易度の低いゲームなのに、ラスボス戦だけ異常。ラスボス戦までに死んだ回数の合計より、この一戦のみで死んだ回数の方が多いかもしれん。
あと、どこかのタイミングで前作をもう一回チャレンジしたいなとは思ってるんですけど。前作を途中で止めちゃったのが心残りで。1は結構ガチめな難しさがあるんだよね。
まぁ冬のマンハッタンはいつか再訪しようかなと。
それではその他のお家エンタメ。まずは本。
大森望(編)『ベストSF2022』
今年も出ました、一年の短編・中編SF作品を振り返るベスト盤。
円城塔、酉島伝法などおなじみのメンバーから、先日亡くなられた津原泰水。そして若手の作家など多種多様すぎてこれはSFなのかと考えてしまう作品まで収録されており、ひたすら面白い。
そんな収録作の中でも最もエンタメ度の高い作品が
伴名練『百年文通』
ティーン雑誌で読者モデルをする主人公の女の子が仕事で訪れたのは、古い屋敷をベースにしたハウススタジオ。
撮影の合間に何気なく座った椅子。目の前にある古臭い机の引き出しを開けると旧字体で書かれた手紙が入っており、末尾には"大正六年"の日付と共に女性と思われる名前が書かれていた。
内容から想像するにおそらく100年前に書かれた恋文だと思われるが、旧字体を読み慣れないために文字をスマホで調べつつ付箋を貼りながら読んでいたら、思いのほか時間が経ってしまったことに気づき、付箋を貼ったまま引き出しにしまう。
ただ、何か心にひっかかるものがあり、もう一度手紙を見ようと引き出しを開けたらその手紙がなくなっており、新たに入っている一枚の紙片には達筆な文字で「誰ですか?」と書かれていた。
100年前の世界と繋がった引き出しを介して文通をするという本作はジャック・フィニイの『愛の手紙』のオマージュ作品であるが、初出が漫画誌『百合姫』であるので百合というかシスターフッドの物語になっている。
現実世界に不満を感じる現代の少女と、学ぶことに貪欲な大正時代の少女。
そんな二人が引き出しを介して文通をしていく中、なんとはなしに現代の少女が大正時代を調べていく内に発見するのは、100年前に世界中を襲ったスペイン風邪。
COVID-19が日本にも蔓延するかもしれないという不安な中にある現代と、スペイン風邪が日本で大流行する直前を生きる少女。
彼女たちはこの災禍を回避出来るのか、という歴史改変SF。
何より楽しいのは大正時代の少女のキャラクタ。今でもその時代を生きた女性の伝記などを読むと、現代の人達よりもよほどラディカルな考えを持っていて驚く事があるが、その猪突猛進なキャラクタがひたすら楽しい。
完成度の高い作品です。めっちゃ楽しかった。
そんな伴名練によるSFアンソロジー作品がちょっと前に出ていて、こちらもオススメ。
伴名練(編)『新しい世界を生きるための14のSF』
若手作家を中心にしたアンソロジー。
斜線堂有紀(『私が大好きな小説家を殺すまで』はお見事)、芦沢央(最近では将棋をテーマにした『神の悪手』が良かった)など説明不要の人気作家のSF作品から、初出が同人誌というようなマイナーな作品まで網羅した一冊。
しかも、それぞれの作品には伴名練によりテーマが銘打たれており、各作品の末尾には古今東西の同様テーマ作品がガイドとして羅列されているという、私のようなSF初心者にはうってつけの保存版。
こちらもハズレ無しのアンソロジーの中で特に好きだったのが
天沢時生『ショッピング・エクスプロージョン』
人口増大と資源の枯渇により世界的な危機にある中で、突如登場した激安スーパー"サンチョ・パンサ"。
商品そのものの自己増殖システムを開発し、陳列されている商品が勝手に増えていくという技術で世界を救う企業となったものの、その増殖をコントロールする管理者(admin)である創業者が亡くなったことで、増殖のスピードにストップがかからないことになる。
増え続ける商品はスーパーを飛び出し、街へとなだれ込んで行く。消費できない量の商品が世界を埋め尽くし人の住む場所さえも奪っていく中、バウンティハンターの主人公が一攫千金を目指してスーパーの本社へと乗り込む。
ここで登場する激安スーパーは"ドン・キホーテ"をモデルとしており、あのドンキの名物(?)でもある圧縮陳列が自己増殖によって世界を埋め尽くしていくという、こんまりが頭をぶち抜きたくなるであろう状況を想像するだけで面白い。
ただ物語としてはサイバーパンクな世界のストレートな冒険譚となっており、終わり方を含めて爽快な作品。
そんな楽しいアンソロジーなのですが、一つ問題というかハードルが高いのが、この本文庫で800ページあるんですよ。
以前も書きましたが、電子書籍で出ている物は基本的には電書で、フィジカルしか出てなければしょうがなくというスタンスで本は購入してまして。
ただ、この手のアンソロジー物などは資料的な意味として形で残しておきたいので紙の本で買ったんだけど、持った瞬間に即後悔するレベル。ぶ厚すぎ。
いや、内容を読んでやっぱ紙で買っておくべき本だったとは思うけど、ページ多すぎですよ。ここまで厚くなるなら上下巻にわけてほしい。
あともう一冊。どうせなら最後もSFってことで
チャック・ウェンディグ(著)『疫神記』
舞台はアメリカの田舎町。
そこに突如現れたのは、ただただ歩く人々。ゾンビのようにひたすら歩き続け、その数は一人また一人と増えて行く。
コミュニケーションも取れず、排泄や食事、睡眠すら必要とせずひたすら歩く彼らは何処へ向かっているのか。そもそも目的地はあるのか。そこへ到達したらどうなるのか。そもそもこれは疫病なのか。それともテロなのか。
何もわからないが、一つだけ判明しているのは、彼らの歩みを止めてはいけないという事。歩き続ける彼らの進行を無理やり止めようとすると、電子レンジに入れた卵のように爆散してしまう。
ゾンビのように歩く人々とその家族、疫病の研究者や医師などが彼らと一緒に移動しながら、この現象はいったい何なのかと探っていると、また別の地域から新たな感染症の報告が…。
いわゆるゾンビアポカリプス物ではあるが、このゾンビ的な歩く人々、本作では夢遊者(スリープウォーカー)と称される人々が基本的には無害であるという点が面白い。
誰かを噛んで仲間を増やすでもなく、吐瀉物を撒き散らすでもなく、ただただ歩くだけ。
この奇病にかかる人も一見するとランダムで、どこから感染しているのかもわからず、対策の取りようがない。
この状態に国民や政府も彼らをどう扱って良いのかわからない。ただただ静観するしかないのだが、私達人間というものは何か出来事が起きたときに必ず原因や因果など勝手なストーリーを作ってしまう。
夢遊者に対し、彼らは巡礼の旅をする人だの、テロリストが作った歩く爆弾だの、悪魔の行進だの様々な憶測が飛び交う。
不確実な情報や茫漠たる不安をそのままに出来ない弱さを持つ人々に広がる混乱や陰謀論。そんな中、世界中に襲いかかる新たな感染症。
驚異的な感染力と致死率の高さ、有効な薬も発見出来ないままに蔓延していく様に、夢遊者によって不安が広がり心の土台が揺らいでいた世界中の人々が、今度は本当に人類の終わりを意識した途端、人間社会の秩序は崩壊する。
夢遊者本人、夢遊者に寄り添う者、彼らの治療法を探る研究者とサポートを行う高度なAI、徒に情報を発信して人心を惑わす者、来る日の為に武器や装備を整える者、夢遊者を天使と崇める者。
なぜ歩き続ける状態の人々が産まれたのか、致死率の高い感染症の正体とは。これらの謎が明かされていくと共に、これまでの登場人物が終盤で絡みあって壮絶なシーンを迎える。
そしてラストにわかる本作のタイトルの意味。
原題は『Wanderers』(放浪者・流浪の民)で、これはこれで秀逸なのだが、日本語版でよくこの単語というか造語をあてたなという。
まさに疫病によって産まれた神の記録。
こちらも一つ問題なのが、長いという事。上下巻あわせて1400ページの大ボリューム。
もうひたすら長い。長いが読みやすい文体と退屈しない展開なのでリーダビリティは高い。ラストの約200ページは一気に読まされてしまった。
しかしこれは傑作ですよ。素晴らしい作品でした。今年読んだエンタメ小説の中でもトップ5に入る満足度。
本国ではもうすぐ続編が出るらしいので、こちらも日本語版が出るとイイですね。
続編は原題『Wayward』だそうですよ。不穏ですねー。
次は映像関連。
Amazonプライム『モアザンワーズ/More Than Words』
高校の同級生の男女。ひょんなことから親友になった二人が、同じバイト先で働くことになり、そこで出会った年上の青年。
3人はすぐに打ち解け、休日も男二人女一人の3人でつるみ、まさに青春という日々を過ごしていく中、実は同性愛者であった年上の青年が男の子を好きになり、徐々にその関係性が変化していく。
原作は同名漫画だそうで。その漫画の続編と共に1つのドラマシリーズとして構成された作品。
ドラマとしての描写がひたすら自然というか、どこまで脚本なのかアドリブなのかもわからないぐらいの空気感が作られているのは凄い。
この土台がしっかり作られていたからこそ、中盤で女の子が決断する突飛な選択がリアルに感じられるようになっている。
これは本当にギリギリのリアリティラインを攻めていて、漫画や小説であれば成立するような話でもドラマだと嘘っぽく見えてしまう展開ってありますよね。この女の子の選択をリアルに見せる事が出来た脚本や撮り方はマジで凄いと思います。
人はどれだけ親密な関係になったとしても、他者を完全に理解することなんて出来ない。
でも、わかりあえないからこそ相手を少しでも理解しようと思う事は大切で、その為には言葉を使ってのコミュニケーションが大切。それでも自分自身ですら思ってもみない言葉を発してしまったり、同時に見せる表情や仕草など醸し出す空気によって、それは沈黙ですら言葉として私達は受け取ってしまい、そこから齟齬が生まれる。
しかし、結局人との関係の中でその齟齬を修正する為には、その機会を待って話し合うしかない。
本作では、その決定的な言葉というものを完全にカットした形で物語が作られており、その前後の関係性の違いから視聴者に想像させる作りなっている。
その部分もやはり役者や脚本によって上手く表現されており、まさにmore than wordsな演出となっているのは凄い。
今年見た国内のドラマの中でもトップクラス。演者の方も映像や演出も全てが素晴らしい作品でした。
Apple TV+『史上最高のカンパイ! 戦地にビールを届けた男』
舞台は1960年代後半のアメリカ。
長引くベトナム戦争により反戦の空気漂う中、ひたすら飲んだくれてばかりの主人公。
親からはボンクラ息子とバカにされ、同級生や飲み仲間はあいつはいいヤツではあるがバカだと下に見られ、妹は反戦運動の真っ最中。
そんな扱いにうんざりした主人公は酔った勢いで、今まさに戦地へ行って戦っている同級生や知り合いにビールを届けて彼らを応援しに行ってやるとフカしてしまい、引っ込みがつかなくなった挙げ句、本当にベトナムまでビールを届けに行く話。
監督・脚本は『Mr.ダマー』シリーズや『グリーンブック』で有名なピーター・ファレリー。
『グリーンブック』では旅をしていく中での爽やかな友情を見事に描いていたが、本作も似たような構成で作られており、様々な土地を歩く中で見た実際の光景、そして出会いが人を変えて行く。
ボンクラだけど憎めない主人公のひたむきさはユーモアが溢れており、コメディ作品として単純に面白い。しかし戦地であるが故に目撃する出来事の数々。それらによってまさに主人公と共に観客もその変化に巻き込んでくる構成が上手い。
主役のザック・エフロンもこんな演技が出来る役者だったのかと驚いた。
そしてもっと驚いたのが、こんなバカげた話がまさかの実話だという事。
実話ベースの映画にありがちな、映画の終わりに現在の彼らの写真が出てくるのだが、まさに映画と同じキャラクタで微笑むおじい達の写真が涙を誘う作品。
あと戦争関連でもう一本
不朽の名作を今回はドイツが製作。
WW1当時のドイツを舞台に、ノリで兵隊に志願した若者。だが、彼が放り込まれたのはドイツ・フランス間での終わりの見えない塹壕戦。
連日続く戦闘と、ただただ死んでいく仲間たち。その中で徐々に消耗していく主人公。
その最中、1918年11月11日の休戦が決まる。
どストレートな戦争映画で、ひたすら見ているこっちの心がすり減るような描写が延々と続く作品。
序盤と終盤でのカメラワークやアングルを同じにすることにより、繰り返される戦闘から煉獄を想起させるような構成になっている事で異様な恐怖感が醸し出されている。これには体の芯から寒気を感じるような瞬間を味わってしまった。
ただオリジナルの映画版に比べると、若干塹壕戦などの描写が薄味にも感じる(この辺りは最近だと『1917』が凄すぎたのでその影響も大きい)が、現代においてここまでの作品を作った事は大変意義があるのでは。
でもやっぱこのタイトル凄いよね。ラストにバンと出た瞬間にゾッとする。
最後に音楽
Sleep Walker - Wind
上にも書いた先月読んだ本『疫神記』に何度も出てくるスリープウォーカー(夢遊者)という単語を見ていたら、アーティストのSleep Walkerを久々に思い出して、あの00年代前後の当時に流行ったクラブジャズをよく聴いてまして。
Sleep Walkerでは、これがおそらく一番有名な曲じゃないかな。
Hajime Yoshizawa - Waltz For Jason (Full Nine Yards Reedit) (Two Banks Of Four Remix)
で、そのSleep Walkerのキーボードだった吉澤はじめの一曲。コレ好きなんだよねー。
久々に氏の名前で検索したら、去年放送されたテレ東の『家、ついて行ってイイですか?』に出てたそうで笑ってしまった。テレ東はヒキが凄いな。
ハレトキドキ - STAY IN MY HEART feat. AZK
80~90年代のJ-POPやユーロビートなどを再構築したハイパーポップアーティストのハレトキドキ。
アルバム『LOST MEMORY』からのこの曲は、AZK(澁谷梓希)とのデュオで現代のWinkって感じですかね。
Enei - The Hammer
わりとダークなトラックを得意とするEneiとしては珍しくニューロファンク的なフレーバー。
彼の持ち味をそのままに、よりアグレッシヴな味付けによってひたすらアッパーな仕上がりに。
なんか一つ一つの音が脳の中枢に攻撃的になれと語りかけるようなトラックで、運転中にかけると危ない気がするんだよね。まぁかけてるんだけど。
ってな感じで今月はおしまい。また来月。