月刊 追い焚き作業

見て聴いて読んで遊んだ記録です

2022年6月の話と7月の購入予定

中途半端な田舎に住んでいると今の時期は様々なルートからきゅうりが貰える季節です。

しかし、今年はきゅうりもらいすぎ。冷蔵庫の野菜室がきゅうりで埋まったのは初めてですよ。一日2・3本は食ってます。マジ河童。

 

そんな7月の購入予定です。

といっても今月も特にピンと来るものは無し。

7日風のクロノア1&2アンコール』、22日ライブアライブはオリジナルを散々やったからなぁという。両方作品共に、熱心なファンが居るのはわかるけれども、私はそこまでなぁ…という感じだったので。どちらも好きですけどね。

 

19日『Stray』ってサイバーパンク猫ちゃんアドベンチャーはちょろっと触る予定。こちらはPSPlusのサブスクに入るらしいので、それでプレイします。

 

 

それでは、先月プレイしたゲーム。

Series X『サイバーパンク2077』

発売日にPS4版をプレイしていた時は、エラー落ちが面倒過ぎてサラリとメインミッションだけプレイして終わらせていたが、今回はじっくりと堪能させていただきました。

いやーやっぱ密度が濃いなぁ。街の作りだけでなく、ストーリーからサブミッション、それらをクリアするまで複数用意されたルート。全てが濃い。

オープンワールドのゲームってプレイし始めの初速が凄くて、後は惰性という感じになりがちだが、『ウィッチャー3』と同じくプレイすればするほど味わいが出てくるのがゴイスー。

『ウィッチャー3』と共に、数年おきに何度も再プレイする作品になるんじゃないかな。2023年はDLCも出るらしいので楽しみ。

 

あとこの機会にすべてのエンディングを見てみたが、ほぼすべてバッドエンド的な流れになっているんですね。

これはCD PROJEKT REDの前作『ウィッチャー3』でも何かのインタビューで、何故これほどまでに後味がスッキリしない終わり方をする話が多いのかと聞かれた制作側が、「ハッピーエンドがほぼないのはポーランド文化の影響」だと話してまして。

ポーランドは西・東・南とまぁ面倒くさい国に囲まれて、あっちこっちからバッチバチでその都度切り裂かれた国であるし、それらをベースにしたロマン主義から実証主義が花開いたなどといった流れによる影響なのかもしれないし。

まぁとにかくハッピーで終わる事は、ピンとこないって感じるお国柄なのかもね。

 

 

それでは、その他のお家エンタメ。まずは本。

ジェイソン・シュライアー(著)『リセットを押せ ゲーム業界における破滅と再生の物語』

著者は前著『血と汗とピクセル』で、『Shovel Knight』といった少人数のインディーズ作品から、『Diablo3』『アンチャーテッド4』などのAAAタイトルまで、完成間近の状態でほぼ必ず行われるクランチと呼ばれる長期間残業が続く状態を丁寧に取材していたが、本書ではゲーム開発者の不安定な雇用がテーマとなっている。

大規模なレイオフ、スタジオの閉鎖や会社の倒産。そんな憂き目にあった彼らが作ったゲームは会社に利益をもたらし、Metacriticではある程度の高得点を叩き出し、ユーザーからの評価も高い作品を出したのに、何故スタジオは閉鎖されなければいけなかったのか。

 

例えば『バイオハザード4』をベースにSFホラー作品として高い評価を受け、現在リメイク版も制作されるほど人気を得た『Dead Space』。

制作したVisceral Games(前EA Redwood Shores)は、TPSなど3人称視点のゲームを得意としていたが、『Dead Space』シリーズ成功の後に親会社の都合により『Battlefield Hardline』を担当。ある程度の成功は納めるものの、次のプロジェクト『Ragtag(コードネーム)』はStar Warsを使った3人称視点のゲームだった。

親会社の方針転換により、TPS→FPS→TPS。シングル→マルチ→シングルと全てのコアとなる要素が交互に制作される事に疲弊したスタッフの離脱とそれを埋める為の急な採用。

 

挙句の果てにEA本社の方針が、シングルプレイからマルチプレイを重視した投資という流れによってVisceral Gamesは突如閉鎖され、従業員は解雇された。

スタジオの維持費が浮いたEAは直後にRespawn Entertainmentを買収し、制作中だった『タイタンフォール3』をキャンセル。現在も世界中にプレイヤーを抱える『Apex Legends』を生み出したのでEA的には妥当な判断と結果的にはなったのだが。

 

また『BioShock』で世界中のゲーマーから称賛を浴びたIrrational Games。

チームを率い、脚本やディレクションを担当したケン・レヴィンは一躍時の人となり。また後継作となる『BioShock Infinite』でも、高い評価を受けセールスも上々であったのに、その作品を最後にスタジオは閉鎖されてしまう。

 

過去在籍したスタッフが語るのは、"天才的な"ケン・レヴィンの一声によって開発が振り回された事。

ただ、これは彼一人の問題という簡単な話ではなく、映画や舞台などプリプロダクションの段階を含めて脚本などを何十回と改稿するのは辺り前だが、ゲームの場合はその段階ですら多額の予算が必要となってしまう。

そして方向性が変更になる度に、デザイナーやプログラマーが作ったものは全て破棄されていく。その状態が数ヶ月以上も続く事による現場の疲弊。

そしていざコンセプトが固まり、ゲーム開発が走り出すと始まる連日のクランチ。

ゲームは完成し高評価を得るが、会社に絶望した社員がポツポツと退職し始め、ケン・レヴィンも『BioShock』シリーズへの情熱を失い、また大規模開発にうんざりし独立。結果スタジオの閉鎖と。

 

このように本書で紹介されている会社で共通しているのが、制作当初の段階ではそれほど人員が必要ではないが、終盤になるに連れて社員を採用し長時間のクランチの結果リリースされるという流れ。

そのリリースされた作品がヒットするかどうか(損益分岐点ではなくパブリッシャーや親会社、もっと言えば株主が納得するような利益を生み出したかどうか)によって次作が作れるかもしれないし、そのままスタジオ閉鎖となるかもしれない。

そういった制作上のラグの部分にかかるコストのしわ寄せが、全て従業員の雇用の不安定さによって支えられているってことをこれだけ詳細に見せられるとちょっとキツイですね。

 

本書の最終章では、この不安定な雇用を続けているゲーム業界に対しての一つの解決策として、開発のアウトソーシングを専門で請け負う企業や、労働組合の結成の動き。

またCOVID-19によって世界中で試みられ加速したリモートを活用する事で、住む場所や国籍すらも越えた開発など。(おそらくゲーマーの中で一番有名なのは『オリとくらやみの森』を作ったムーン・スタジオですよね。彼らは完全リモートで世界中からスタッフを集め、拠点となるオフィスは持ってない)

 

それでも面白いゲームを作るという曖昧なプロジェクト、それは映像からサウンド、コントローラーを通して感じるプレイフィールまで多岐に渡る要素が複雑に絡み合った総合芸術となるクリエティブな仕事は、ちょっとした無駄話などチームのコミュニケーションも大事になってくるので、そんなに簡単な話でもない。

本書でもゲーム制作者の一人が「アウトソーシングのしやすさは、プレイヤー体験に近い仕事であればあるほど低下する」と答えてますし。

 

まぁどうしても若者が憧れる職業ってのは、いくらでも替えが利く状態になってしまい不安定な雇用やハラスメントの温床になってしまうので難しい所ですね。

それに四半期の決算の度、株主へ一番簡単にアピールできるのはレイオフだろうし。その人材の流動性のおかげで企業のパフォーマンスが上がっている部分ももちろんあるので…という。

 

これを読んだ後にAAAタイトルの長いスタッフロールを見ていると、これだけズラリと並んだ人物の中で現在も会社に残っているのは何人居るのだろうかと考えてしまう一冊です。

日々私達がプレイしているゲームがどれだけの労力によって生み出されているのか、またそれが面白いゲームであるということがどれだけ奇跡的な事なのかがよくわかる前著『血と汗とピクセル』とあわせてぜひ。

 

 

ジョエル・ディムズディール(著)『洗脳大全 パブロフからソーシャルメディアまで』

20世紀以前の教会が主に行っていた改宗と自供に促す拷問からパブロフの研究、軍事産業における心の改造、誘拐事件の被害者。そしてSNSの登場。

過去100年に渡り、人間は他者をどうやって洗脳しようとしてきたかというのを時系列を追って見ていく一冊。

 

洗脳を研究したパブロフと言えば条件反射の代名詞として有名だが、ターニングポイントとなったのは研究所の洪水。

近くの川が溢れたために水浸しになり、パブロフの犬が洪水によって死にかけたが、助け出した彼らの性格が以前とはまったく変わってしまっていた。そこからトラウマを与える事によって生物は隠された脆弱性を脳に残してしまう事が発見される。

強いショックを与える事で脳にウィークポイントを作り、そこを起点に新たな情報を植え付けて行く事が研究されていく。

 

また洗脳という分野では一歩遅れたアメリカは、朝鮮戦争でのアメリカ兵の中国への寝返り、長引く冷戦の中で東側諸国には特別な洗脳システムがあるのではないかという疑惑など、彼らに追いつけとばかりに生まれたMKウルトラ計画(『ストレンジャー・シングス』でイレブンが生み出された実験ですね)など洗脳の研究が行われていく。

 

そんなこんなで世界中で拷問から電気ショック、薬物まで様々な方法で人の心をコントロールする研究がされてきたが、1973年に起きたストックホルムでの銀行強盗、翌1974年のパトリシア・ハースト誘拐事件によってフェイズが変わるのが面白い。

ストックホルム症候群の語源にもなった事件で、監禁された被害者が犯人に愛着を持ってしまった事。パトリシア・ハーストの事件では誘拐被害者だった女性が誘拐犯と暮らす内に共謀して犯罪を犯す側になってしまう。

これらの事件では、それまでの研究よりも短い期間で、しかも過度な拷問をする事無く思想改造が可能である事が証明されてしまうという。

そこから人を洗脳するノウハウがある程度確立されていく様子の鮮やかさと怖さ。

 

その後本書では、人民寺院、ベヴンズゲイトと信者が望んで自殺までしてしまう程強い洗脳が行われた宗教の事例。最後に現在のソーシャルメディアを中心としたネットを介して伝染する洗脳の話で終わる。

 

結局人間の進化の中に、協力的コミュニーケーションを重視する設計がされているので、人は他人に影響を与えたいし理解または信頼して欲しい(スムーズな情報の共有と伝達)。受け手側はある程度情報の共有スピードを上げる為に、相手を信頼し模倣したいという本能がある。

それが社会や宗教が進むに連れて集団という物が重視され、コミュニティ(小集団から国家まで)にとって友好的な人間になるよう他者を改造する必要があった。

ただ現在でも確固たる洗脳の方法というのが確立されていない所を見ると、洗脳という行為そのものが見果てぬ夢のような気もしてきますね。それほど人は単純ではないと。

 

洗脳というテーマを時系列で追った事がなかったので、本書のように並べて眺めて見ると断片的だった情報が整理されてクリアになった気がしました。

あと一つ。原題は『DARK PERSUASION』(闇の説得術)なので、大全ってのは言い過ぎですよ。網羅的な本ではないので、そこを期待しないほうが良いと思います。

 

 

平山亜佐子(著)『戦前突端語辞典』

大正8年から昭和15年までに刊行された流行語辞典から、その当時の世相や風俗が伺い知れる突端語(流行語)が紹介されている一冊。

大学生を中心に教養主義的な文化が花開いた時代でもあり、古今東西の文学から哲学に外来語が混じって流行語が生まれているのが面白い。

 

パパッと紹介しますと。

言葉は同じでも意味がまったく違うものとして"アマちゃん"。

甘い、アマチュアの意味で使われていたが、ドラマのヒットで海女の意味まで内包している言葉ですね。

でも当時はドイツ語のAmazone(女丈夫、英語のAmazonですね)からの転化で、映画や文学・スポーツやおしゃれもせずテストの点ばかり気にして勉強ばかりしている堅物という意味だったらしい。

また女性に甘い男という意味でもアマちゃんと言われたそうで。

 

ゲーマー諸氏にはビビッと来る言葉"タイラント"。

バイオハザードでドスドス歩く足音でビビらされ、さらにはロケットランチャー持って追っかけて来るアレを想像するが、そもそも"tyrant"が暴君という英語であるように、人に対して使われていたらしい。

「ウチの妻(または夫)はタイラントだからなぁ」というように。家人の足音で機嫌がわかってビクッってなる時ありますよね(謎の問いかけ)。

 

この本で一番好きだった言葉は"さよなら五分"。

編み上げ靴を履くのに時間がかかる事を揶揄した言葉で、訪問宅から辞去する際「お邪魔しました」と告げた後に靴を履く来客とそれを待つ家主の間に流れる手持ち無沙汰な時間から来た言葉だそうで。

今でもありますよね、お互いが去り際のあいさつした後に訪れる謎の時間。送り出した車がなかなか発車しない感じ。

それを詩的に表現していてとても好きです。

 

寝る前にパパッと開いてサクッと読むのにおすすめな一冊でした。

 

 

それでは、ここから映像関連。

Netflix『二十五、二十一』

90年代の韓国を舞台に、フェンシングに人生をかけた女子高生の物語。

スポーツ、恋愛、家族など10代後半のイベントが全て詰まったドラマでエモさ爆発。

永遠のように今の関係がずっと続くかのように思える毎日が、それぞれの成長、立場の違い、人とのすれ違いによって少しずつヒビの入っていく悲しみ。

本作では何度も成長痛という言葉が出てくるが、様々な出来事が急に起きすぎて若いからこそ上手く対応出来ないまま決断を迫られ、でもそれが各々の成長に繋がっていくという成長の残酷さ。

青春ドラマのツボが全てが詰まったような作品で、何度も笑って何度も泣きました。

 

本作ではラスト2話に関して視聴者から賛否(ほぼ否)があって物議を醸したようですが、これは確かになぁという。

最後の最後でキャラクタの一貫性が崩れてしまっており、この人そんなキャラじゃないじゃん的な部分がセリフから小道具まで乱発されてしまった。これは本当にもったいない。

 

まぁそこはそれとして、大人が懐かしむ青春ドラマとしては秀作で、今後も深く心に残るような素晴らしい作品でした。

ただ序盤はスロースタート、6・7話辺りでガツンとギアが入る感じがあるので、なんとかそこまで頑張ってみてください。

 

つーか本作では主人公の女子高生と母親の関係が上手く言ってない部分が強調されているけれど、最近ホントに母と娘ってテーマが多いですね。

始まったばかりの所では『ミズ・マーベル』もそうで、Disney繋がりで『私ときどきレッサーパンダ』もまるっきり同じ。

そういや1個前かな?の『文藝』(宇佐見りんの『くるまの娘』が載った回)も母と娘をテーマにしてたし。

トレンドなのでしょうがないが、またそれか感が出てしまうのは如何ともし難い所。

 

 

Netflixスプリガン

Netflixジャパンは相変わらず古臭い作品ばかり作っているが、これもやりましたね。

今の蒸し暑さを忘れさせるテンプレートなギャグセンス、説明台詞ばかりで構成される物語と加齢臭が目に染みる。

しかし本作はそれこそが狙った部分であり、現代向けに下手にアレンジせず、原作漫画の雰囲気をそのままアニメ化する事に成功しており、その古臭さに文句を言うのは野暮であるという。

 

本作は世界中のオーパーツを巡る物語だが、90年代のOVAにもし現代のCGやモーションキャプチャなどの技術があったらというような、この作品こそがオーパーツとして見えてくるのが面白い。

 

こちらは1・2話目がイマイチというコケ方をしているので、できれば3話まで我慢してください。この3話が傑作なんですよ。

 

 

Netflixリンカーン弁護士

法定モノの面白さがサクッと味わえる新シリーズ。

弁護する被告はどこまで嘘をついているのか。その肝の部分を中心に、ひたすらテンポよく話が進む。

最近の予算が多い海外ドラマでよくある凝った画面やライティング、複雑に入れ込んだ小ネタなどを使わず、あくまでもちょっと古臭いテレビドラマ的な軽めのテイストで作られているのがちょうど良い。再生ボタンを押しやすいというか、気負わずにパパッと見れる娯楽作品的なシリーズ。

 

まぁでも10点満点中8点といった感じで、新作の立ち上げとしては若干弱さを感じるものの、シーズンの更新は決定しているようなので、今後も楽しみに追っかけて行きます。長く続くとうれしいな。

あとコレは安心してください。1話目から面白い。

 

いやーしかし今年のNetflixはマジでキレッキレですね。

新作も面白い作品多いし、『ストレンジャー・シングス4』なんて過去最高の出来だし(これを書いているのは6月30日なので、まだ後半を見てませんが)。

 

そしてついに7月から最終シーズンの後半がスタートする『ベター・コール・ソウル』。

これ現在配信されているシーズン6の最後まで見ている方なら納得すると思いますが、ドラマとしての面白さは『ブレイキング・バッド』を越えたかもしれんね。いや、本家あってのコレなのですが、私の中では逆転してしまった感がある。

シーズン6に関わっているスタッフ全員目がバッキバキなんじゃないかってぐらいキマってるシーンの連発。スゲーですよ。

 

 

最後に音楽。

aran - Reduxation

この曲だけループしまくっても良いぐらいに飽きの来ない一曲。ひたすら流しながらカオスとなっていた引き出しの掃除をしました。でもまだ聴き飽きないよ!

 

JAKAZiD - Take Me Higher

リリースは去年の夏ですが、今年も日中の暑い最中に運転する際に活躍していただいております。

 

Sub Forcus - Off The Ground

こちらも運転中に絶対かける曲。もう暑すぎてこのぐらいガッツリのサウンド入れとかないと仕事する気力湧かないっすよ。

 

kamome sano - not found [feat. ina (QQIQ)]

曲のリリース自体は相当前(つーか何年前よ)なのですが、ちょい前にPVが公開されていたので改めて聴いたり。

 

kamome sano - sweet syrup

Kamome sano繋がりでこちらも久々に。

インストではこれ一番好きなんだよなぁ。

 

ってな感じで今月はおしまい。また来月。