ここ数日から朝晩の空気にほんの少しだけ秋を感じ、永遠にも感じられた暑い夏の終わりが垣間見ています。
秋の気配に訪れに対し、暑さを耐え抜いたという達成感を感じるのは、ここまで生きて来て初めてのような気がする。
そんな9月のゲーム購入予定。
1日
XBOX『STARFIELD』
Bethesdaのトッド・ハワードのディレクター作品としては『Fallout 4』以来8年ぶりのオープンワールドゲーム最新作として、2023年最大の期待作。
今回は宇宙を舞台にした広大な世界、しかも完全新作のRPGということで、どれだけの規模の世界が詰まっているのか。そして、この宇宙ではどんな物語が待ち受けているのでしょうか。
BethesdaのAAAタイトルは、数年に一度の祭りですよね。いやー楽しみ。
あと26日に『サイバーパンク2077』のDLC『Phantom Liberty(仮初めの自由)』が出るのでチェックしておきたいし、先月リリースされた『Sea of Stars』もどこかのタイミングでプレイしたい。
28日発売の『イースX- NORDICS-』はどうしようかなぁという。
イースシリーズ自体ナンバリングはほぼ全てプレイしている(確か5だけ未プレイかな)ので、買うつもりでいたのですが、事前に公開されている映像を見るに…うーん。
アクション部分はいつも通りだとしても、海戦や船関連のショボさというか、2023年にこれやらされるの?って正直思っちゃったよね。ごめん。機会があればいつかやります。
まぁ今月はこんな感じで。
それでは先月遊んだゲームの話。
XBOX『Inertial Drift』
見た目はアーケードライクなレースゲームだが、本作はツインスティックレースゲームという独特な操作系の作品となっている。
通常のレースゲームのようにアクセル・ブレーキ・ステアリングに加え、そこに右スティックを使ったドリフトという操作が追加。本作はいわゆるグリップ走行が不可能な程に車が曲がらないので、カーブの度にドリフトをしまくって走ろうぜという作り。
リアル系のレースゲームでのドリフトコントロールはかなり複雑な操作が必要となり、特に通常のコントローラーだと難しいが、それを右スティックに入れ込んだ事によって簡単な操作でドリフトの爽快感と挙動コントロールの面白さを作り出しているのは凄い。
また車種によって挙動がまったく違い、ドリフトのきっかけ作りからカーブを抜けた後の処理まで、違う操作を要求してくるのも面白い。
間口は広く奥は深い、キラリと光る作品。
XBOX『Chicory: 色とりどりの物語』
突然世界から色が無くなってしまった島を舞台にしたADV。
プレイヤーはこの世界に唯一色をつける事が出来る魔法の絵筆を手に、なぜ世界から色が無くなってしまったのかを探る物語。
ゲームシステム的にはザコ戦のない2Dゼルダといった感じで、右スティックを動かして絵筆となっているカーソルを使い、さまざまなパズルを解いたりボスと戦っていく。
そんな絵柄も含めてほんわかした作品のように見えるが、ストーリーはなかなか重い。
アーティストや芸術家など物を作るという人たちの抱える苦悩がテーマになっており、才能・努力・嫉妬・重圧などが丁寧に描かれている。
きっとプロやアマチュア問わず、何かを作る、作ろうとした経験のある人なら、かなり刺さる内容になっているかと思います。
ちなみにタイトルにあるChicoryというのは上の画面では右側の人で主人公の師匠(メンター)、左側で電話しているのが主人公。
本作では電話の使い方が面白く、世界の至る所にある公衆電話を使うと実家の母に電話をかけて、次に進むべき場所や目的のザックリとしたヒントが聞ける。
その際、より詳細なヒントが聴きたい場合は、父に代わってもらう事で道順・手順まで教えてもらえるというのが面白い(その際に母は「お父さんは話が長いけど代わっていい?」なんて会話を入れるのも上手い)。
あと本作はローカライズが本当に素晴らしかった。インディーズからAAAタイトルを含めて、ここまで丁寧に翻訳がされている作品はなかなかない。
ユーモアのあるセリフから、ストーリー上の重い会話までまったく違和感がない上に、世界観を丁寧に表現した豊かな日本語表現になっている。
マジでローカライズとしてはトップクラスの仕事だと思います。ありがとうございました。
それでは、ここからはその他のお家エンタメ。まずは本。
8月という事で、戦争関連の本を多く読んだので、その中から面白かった物を。
ジャネット・スケスリン・チャールズ(著)『あの図書館の彼女たち』
舞台は1939年のパリ。
主人公はフランスのパリにあるアメリカ図書館の司書として働く女性。
文学を愛する彼女が、その図書館の利用者との交流や本に携わる事で充実した日々を過ごしていたが、そこに迫るのはドイツ軍の足音。
マジノ線の崩壊からフランスは首都移転、それによりパリは非武装都市宣言をし、あっという間にパリ市街はドイツ軍に占領される。
そんな過酷な状況下の中でも、戦地に居る兵士へ本を貸し出し、またパリに残るユダヤ人へとこっそり本を届ける活動をする職員たち。
戦前・戦中・終戦までのアメリカ図書館の出来事を丁寧に描いた一冊。
本書の物語は、実在の人物や実際の出来事がベースとなっているそうで。
図書館に携わる人々が本という文化を守るべく覚悟を持って戦時下に本を届け続けるという取り組みや、様々な登場人物のパーソナリティが多層的なレイヤーを織りなすリアリティのある人物として描かれている。
そんな本作で最も重要なテーマとしているのは、嫉妬という感情のコントロールの難しさ。
戦争が終結し生活が落ち着いた時、そこで改めて他者との比較が生まれる。
世界が混乱の真っ只中であった時は誰もが手を取り合って生活していたハズなのに、人それぞれの足元が確立された瞬間、人との違いが明確になり、胸の奥に湧く嫉妬の感情。
先が見えない日々から抜け出しやっと光が見えたはずなのに、気付かない程に小さな嫉妬の炎が生まれ、その種火から生み出された小さな悪意によって全てが焼き尽くされる怖さ。
そして、この物語が巧妙なのは、戦時下のパリの世界と並行して、1980年代のアメリカが描かれている。そのアメリカでは、パリに住んでいた主人公が移住してきており、彼女はアメリカでは変わり者の女性として腫れ物のように扱われている。
パリの生活からアメリカへの移住までに何があったのか。何故彼女はアメリカに住み続けているのか。
謎多き孤独な彼女の元へ、ある日、向かいに住んでいる少女が訪ねてくる。
そこで生まれるもう一つの物語。
全ての過去と現在は交錯し、彼女は生きる上で本当に大切な事を少女に伝える。その瞬間、深い感動が胸を打つ。
一度読み始めるとその世界に入り込んでしまうかのような没入感と、人間の心の機微を丁寧に映し出した物語の美しさと悲しさ。今年読んだ本の中でベストかもしれない。それくらい素晴らしい本でした。
辻田真佐憲(著)『「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史』
"八紘一宇""万世一系""教育勅語"など近年右翼的なワードの台頭に対し、右派は道徳や愛国心を育てる思想・伝統の一つとして現代でも有効であるとし、左派は戦前回帰の危険な思想であるとしている。
しかし、右派・左派それぞれの思想の中で語られる戦前とは一体何なのか。漠然とした戦前というイメージはどういった流れで作られてきたのかを考える一冊。
まず、こういった天皇を中心とした愛国的な思想が生まれるターニングポイントとなるのは、もちろん明治維新。
近代化と王政復古のために行われた明治維新であったが、それまで各藩によって分かれていてバラバラだった国民に対し、日本人というアイデンティティを作り出す必要があった。
そこで日本という国は長い伝統がある国であり、共通のルーツを持つ国民であるという物語を作りあげるために、都合よく利用されたのが天皇であり、古事記や日本書紀などの神話であった。
それまで日本書紀や古事記の内容など創作であるというのは当たり前の認識であったのに、物語の神聖さと歴史の曖昧さによって神格化が誇張されていく。
それは明治から昭和初期の人々へ次々と膾炙していき、そのデタラメさは市井の人々から昭和天皇にまで至り、神話と同調し肥大した自己認識は攘夷の感情と結びついていく。
創作がまるで事実のように捉えられていく様を「ネタがベタになる」と表現しているのには膝を打った。
ただ本書はそういった日本の歴史から、近代の右派・左派へのディスりではなく、日本の歴史を100点でもなく0点でもなく、65点として見ることが必要であると主張している。
ちゃんと過去の歴史の功罪を見つめた上で、より柔軟に捉えることが、この国の未来を作る土台となるのだと。
結局共同体というのは幻想でしかないので、その集団を導く為にもうちょっとマシな物語(歴史)を柱にして、国家を運営していこうぜというのは真っ当な主張。しかし、幻想であるが故に扱いやすい物語・歴史を利用したいというのも国家や宗教の常でして。まぁ難しいっすね。
あと、やっぱり本書などを読んだりここ最近の出来事を見るに感じるのは、単純な右傾化とかではなく伝統回帰の流れなんですよね。それもここで書かれた戦前ではなく、明治の頃に作られた物語に惹かれているように見えますね。
平井美帆(著)『ソ連兵へ差し出された娘たち』
1930年代に岐阜県の村人が国策として満州開拓団に参加し、その生活から敗戦後に襲いかかった地獄の日々が書かれたノンフィクション。
満州へ移住し村を作って貧しいながらもなんとか日々を暮らしていたが、日本の敗戦により状況は一変。
満州開拓団を守るべき関東軍の高級参謀達は、戦況が悪化している事をいち早く知って家族を含めて帰国してしまい、丸腰のまま残された人々や逃げ遅れた関東軍兵士達が満州へ取り残された。
そこへ土地や物資を取り返そうとする中国人、また同時に日本へと宣戦布告したソ連兵もが同時に襲いかかる。
満州の中でも比較的南にあった本書の舞台となる村では、暴動を起こす中国人から村を守るため、またソ連兵による略奪を収めるために、ソ連兵と一つの契約を結んだ。
それは約600人の開拓団を守るためという大義の元に、その見返りとして、10数人の未婚女性をソ連兵へ"接待"に差し出すということ。
岐阜の村から移住した彼等は、その村の力関係がそのまま残った形で運営されており、女性たちが拒否出来るような環境ではなかった。
この件は、そもそも村社会的な構造の問題ではあると思うが、やはり根底にあるのは女性蔑視。
既婚女性は夫の所有物であるから差し出されない。未婚女性は誰の物でもないから差し出されるという歪み。
日々繰り返される接待の中で過酷な生活を送り、蔓延する感染症と性病によって亡くなっていく女性達。
そんな状態をなんとか生き残った女性達であったが、日本への引き揚げに向かう移動の際は現地の中国人との交渉で使える便利な"通貨"として女性達は差し出される。
また同じ日本人達が引き揚げの船を待つ場所にあっても未婚女性に人権はなく、一人で居れば不特定多数に性的暴行や誘拐されて中国人に売り飛ばされる危険性が高いため、誰かの所有物であるという証明の為に日本人の独身男性を海を渡るまでの仮初めの夫として利用しなければならなかった。(もちろんその間、男性からの性交渉を拒否は出来ないが多数から襲われるリスクは回避出来る)
そんな度重なる暴行の末、日本に帰ってきて待っていたのは、女性たちへの差別。
ソ連兵や中国人、引き揚げ中の日本人など不特定多数と性行為をして汚れた女として、陰口をたたかれ、村八分にされた。
近年この問題に関して、やっと声を上げる事が出来た女性達であったが、過去の出来事に向き合いたくない上に、正式に歴史として残すかどうかの判断の決定権を持つ社会的強者である男性たちに対し、受けた苦労を「わかってもらう」という下からの立場で話さざるをえないという、根深い家父長制とパターナリズムに絶望する。
その結果、全ての出来事を過去にしたい男性たちによって、当事者に意見を聞くこともなく、形だけの慰霊碑が唐突に作られる。
被害にあった一人の女性は語る。
「『国を救うために』って言われても、私はあのとき17歳で、そういう受け止め方は出来なかった。涙が…、血の涙がよう出なかったと思うくらい泣いた。美しい話にしてもらっちゃ困る」
ここからは映像関連。
Netflix『マスクガール』
小さい頃から人前で歌って踊る事が大好きだった少女。
成長した彼女はダンスはもちろん、スタイルも抜群だったが、顔だけがイマイチだった。
27歳になった彼女は会社員として働くも、夢を諦めきれず、夜は顔にマスクをしてネット配信をするマスクガールとして活躍していた。
上司カッコいいけど振り向いてくれないなーとか、やっぱ男社会だと顔が良いだけで有利だよねーとか、そんな私も夜はスパチャで稼いでます的なコメディタッチの1話から始まったと思いきや、まさかの2話で主役が交代。
というのも本作はマスクガールを中心とした群像劇になっており、コメディタッチだった物語は2話の中盤で一変。そこから血と暴力、恨みと復讐の物語へ向かっていく。
本でも映画でも、見ている途中である程度先の展開を読むという事を無意識の内にしがちですが、本作は1話1話毎回その想像の斜め上の展開になっていく面白さ。
そういえば最近、ある程度内容を想像して見に行ったら全然違う話だったという作品を連続で経験してまして。
映画の『バービー』や『TAR/ター』も事前に情報をほとんど入れずに見に行ったら想像と全然違うストーリーで驚いた。
『バービー』なんて、まさか全方位ディスりをしてくるとは。
それに『TAR/ター』なんて、もはや何のジャンルの映画なのかわからないし、困惑しっぱなしだった。
つーか、ラストシーンとかゲーム(厳密に言えばモンハン)を知らない人、マジでぽかーんですよ。まぁゲーム知らなくても文脈と映像から何故あのラストなのかは想像出来るんだろうけど、そのフックがモンハンってのは弱くないかっていう。
なんて話が大きくズレましたが、この『マスクガール』も展開に意外性がありすぎて、本当にめちゃくちゃ面白かった。
ルッキズムをベースとした韓国ノワール、そして韓国作品お得意の3世代に渡って変化してきた社会と価値観を織り交ぜた見事な作り。
最後の場面では涙が止まらなかった。
Netflix『D.P. -脱走兵追跡官-』シーズン2
前作に引き続き徴兵された若者が入る屯所から脱走した人々を追うドラマ。
いじめはもちろん、ジェンダーの問題、さらに北朝鮮との国境沿いの事件などシーズン1よりもさらに踏み込んだ内容になっていて見ごたえがある。
物語的には、一貫して個人の倫理に基づき命令を違反するという構成ではあるが、そこで描かれる事件の解決、そして人それぞれの立ち上がる姿が美しい。
まともに機能していない組織の中であっても、誰か立ち上がる事によって変えられる可能性は必ずあるのだというメッセージの心強さよ。
Netflix『LIGHTHOUSE』
星野源とオードリー若林が1ヶ月に1回会って収録した6ヶ月間のトーク番組。
毎回トーク内容に沿って星野源が曲を作るという構成になっていて、星野源への負荷の高さに心配になるくらい豪華な作り。
ただテロップのダサさとか、追加された笑い声の異常な程の過剰さなど、悲しいほどにダサい演出はひたすら邪魔でチープな画になっていてもったいない。
まぁエンタメの一線で活躍する人の中身が垣間見える作品として見る価値は十分にあると思います。
ただ、あくまでも佐久間宣行らしく基本は内輪受けの作り(悪い意味ではまったくなく)。本作も星野源とオードリー若林のパーソナリティをコンテクストとして理解している人向けの内容。彼等の言葉に合わせ一緒にうんうんと首肯するか、予定調和のヌルさがキツいと思うか、人によって分かれそう。
BSフジ『タイプライターズ~物書きの世界~』
アイドル兼作家の加藤シゲアキがMCの本をテーマにしたトーク番組。
8月の放送では京極夏彦がゲスト出演してまして。
映像では久々に氏の書庫を拝見しましたが、本当に整理整頓の鬼。
ぴつたり、みつしりと詰まってゐる本棚の美しさ。
この番組で話していた「本は何冊増えても本棚に入る」「増えれば増えるほど隙間が空く」という謎の言葉に感銘を受けまして。
さすがに今は電子書籍がメインなのでそれほど頻繁に整理をする必要はなくなりましたが、それでもただ隙間に詰めるだけでシリーズも何もかもごっちゃになっている本棚を改めて整理したい気持ちがムクムクと。
そこはそれとして、今月は京極夏彦の百鬼夜行シリーズ17年ぶりの最新刊『鵺の碑』が出るので、超楽しみ。
思い返せばデビュー作の『姑獲鳥の夏』を読んだのは、私が中学生の頃でした。
終盤のクライマックスで"姑獲鳥"が"うぶめ"になる瞬間、読みながら「あぁぁ…」って声が漏れた経験は20数年経った今も忘れられません。
最後は音楽。
lapixのニューアルバム『Flying Method』から2曲。
lapix - Horizon Blue feat. Kanata.N
lapix - Day by Day(feat. Nicole Curry)
音ゲー曲のExtendとこれまでのベスト盤の2枚組というファンならマストのアルバム。
Horizon Blueの1分32秒辺りからの展開は何度聴いても鳥肌が立ちます。マジで最高。
この曲WYLTKでデビューしたSloweのアルバム『Calibrate』がリリース。
Slowe - WYLTK
ソウルやジャズ辺りをベースにLo-Fiのテイストを入れ込んでみたりと、心地よいアルバムになっててメッチャ好き。
家に帰ってきてまず音楽をかける時、しばらくこのアルバムばかり再生してました。
腰を据えてガッツリと聴くのもあり、会話の邪魔にならない程度の音量で流していてもあり。
そして今月のLiquid。
pyxis - Thoughts In My Head (ft. Shady Novelle)
チルくてLiquidなdnbを得意とするpyxisらしいトラックに乗るShady Novelleのヴォーカル。
なんかクセになる歌声なんだよね。MozeyのMidnight Callerとかね。なんか好き。
Mozey, Shady Novelle & Dynamite MC - Midnight Caller
最後は最近よく聴いてるアーティストum-humから。
um-hum - U-MOON
um-hum - Popcorn
um-hum - 曇りくらいが丁度いい
メンバー全員20代というフレッシュなバンド。
プログレを下地に、ジャズやR&Bの要素を細やかに入れたサウンド。その音に乗る歌詞の豊かな世界観。6ヶ月連続リリースとして曲がバンバン出てますが、そのどれもが素晴らしい。
ちょっとこのバンドは凄いですよ。
こんな感じで今月はおしまい。
また来月。